追手門学院×GAMBA OSAKA

特別対談 追大 × ガンバ大阪  橋本選手

坂本貴博さん 経済学部 マーケティング学科3回生(さかもと・たかひろ)1988年、大阪市生まれ、2008年追手門学院大学入学。経営学部水野浩児准教授のゼミに所属、ガンバ大阪ホームゲームのエコボランティア活動に参加、リーダーを務める。
橋本英郎 選手(はしもと・ひでお)1979年、大阪市生まれ。サッカー日本代表。大阪府立天王寺高等学校、大阪市立大学経済学部卒業。ガンバ大阪ユースを経てガンバ大阪のMFとして活躍。
巽 樹理さん 追手門学院大学 職員(たつみ・じゅり)1979年、大阪市生まれ。元シンクロナイズドスイミング日本代表。シドニー、アテネの各五輪で共に団体銀メダルを獲得。追手門学院大学を卒業後、同大学職員。トップアスリートの社会貢献団体「アスリートネットワーク」理事。

※2010年11月15日

絆強め、共に世界へ

 スポーツの分野ではグローバル基準のチームづくりが始まって既に久しい。明確な目的意識と不屈のチャレンジ精神。世界を目指すアスリートには、「目標喪失世代」といわれる学生の誰もが憧れ、その生き方を学びたいと思う。追手門学院大学では2010年2月J1のトップチーム、ガンバ大阪とパートナーシップ協定を結び、ホームゲームでの学生エコボランティアを中心に、連携活動を本格化させた。2011年4月から併設の追手門学院高校(茨木市)がガンバ大阪のユース選手(1年生14人全員)を受け入れ、教育現場とプロスポーツの連携作戦に一層弾みが付く。新たな展開をとらえ、ガンバ大阪橋本英郎選手との対談企画を軸に連携の成果と意義を考えた。

絆強め、共に世界へ
坂本
橋本選手も巽さんも僕も同じ大阪市出身。
今日は地元・大阪を応援する対談ということで(笑)、よろしくお願いします。
橋本
どの辺なんですか?
坂本
阿倍野区です。
橋本
あ、同じですね!
坂本
(感激の表情。橋本選手を前にして)
実はとっても緊張しています・・・。
巽さんは市内のどこですか?
巽
生まれも育ちも福島区です。
(地元ネタで坂本の緊張をほぐす・・・)

明確な目標があるから頑張れる

明確な目標があるから頑張れる
坂本
まず日本代表経験をもつお二人に「グローバル人材」になるための秘訣をお聞きしたいと思います。
橋本選手はどんな目標を立てて頑張ってこられたのですか?
橋本
僕の場合、目標となる選手が身近にいたことが刺激になりましたね。
同期に稲本潤一選手や新井場徹選手がいます。
先にプロになっていく彼らを目標に地道にステップアップするよう頑張りました。
日本代表になって、10年目でまた一緒にグラウンドに立てた時は、嬉しさを通り越して人のつながりの不思議みたいなものを感じましたね。
坂本
2007年に日本代表入りを果たしていますよね?
橋本
はい。ただ、あの時はバックアップメンバーで、フィールド練習にも参加できなくて、本当に辛かった。
でも当時の経験が今に生きていると思います。
巽
わかります。私も初出場のシドニーのオリンピックは補欠だったんですね。
この時の悔しさがバネになってその後レギュラーとなり、4年後のアテネでの団体銀メダル獲得につながったと思います。
本音を言うと練習が辛くて、「ここで辞めたらシンクロが嫌いになるだけ。
同じ苦しい思いをするなら最高の舞台で輝きたい」と、アテネのメダルに照準を合わせましたね。
明確な目標があったから頑張れたんじゃないかな。
橋本
僕、目標があまりにも高すぎると逆効果なので、身近な目標を立てていましたね。
すごいスーパースターの選手を目標にしてしまうと、遠すぎて頑張れないんですよ。
だからもっと近いところで目標を決めていました。
恥ずかしいですが、高校時代は国体が目標だった(笑)。
坂本
橋本選手はサッカーと学業を両立させ、大学に進学されましたが、文武両道の高校・大学時代、将来をどう考えていましたか?
橋本
家族や監督によく言い聞かされていたので、“その先”の意識は自然に根付いていたと思います。
ユース時代は半年の短期契約、だから危機感もあったと思う。
それでセカンドキャリアを考えて、大学に進学したんです。
正直勉強は「本当に」大変でした。
東大京大に進学する生徒に照準を合わせた授業で、合格点をとらないといけない。
苦労する以上は学業とサッカーの両面で結果を出したいという気持ちから、サッカーを続け易い環境を考えて大学を選び受験しました。
坂本
今の僕達学生に一番足りないのは明確な目標がなかなか持てないことかもしれません。
明確な「志」、「目標」がないから精神力も持続力も育めない。
真のスポーツマンシップとは何か、アスリートの生き方から何を学ばなければならないのか、わかったような気がします。

厳しい環境、試練が人を育む

厳しい環境、試練が人を育む
坂本
2011年4月から、追手門学院高校でガンバ大阪ユース選手の受け入れが始まります。
橋本選手もガンバのユース出身ですよね?
橋本
はい。今のユースの子たちはとても恵まれていますね。
羨ましいなぁって思います。
僕たちの時代は練習グラウンドなんか土だし、シャワー室もなかったり環境は全然整ってなかった。
今春(2011年)からは、高校と練習場が近く、新たにユース選手の寮生活が始まるんですよね。
環境が整い良いと思う反面、精神面の甘さが生まれないか心配ですね。
今の選手は恵まれすぎて危機感が希薄。意識改革と同時に若い選手たちが自ら試練を課すことも大切でしょう。
坂本
そんなに違いがあるんですね。
橋本
そうなんですよ。僕らのときはほんとに体育会系で、試合に負けたら走る。
誰かが吐くまで走る。誰か吐けよ(笑)そんな環境でしたね。
(一同笑い)
巽
そう考えると環境や周囲の人たちの影響って大きいですよね。
橋本
ええ、恵まれない環境の海外クラブチームと試合をするなどして世界の実状をもっと知って厳しさに触れるのもいいんじゃないかな。
元日本代表監督イビチャ・オシム氏は「スポーツも戦いである以上、相手を叩きのめす冷徹さが必要」と日本人選手の甘さを指摘しています。
巽
世界ではシビアな戦いが待っています。
私も高校1年でナショナルチームに入って、ドイツの大会に出場したとき、精神的にも大人の外国人選手を見てその違いを痛感しましたね。
橋本
日本代表の本田圭佑選手も言ってましたね。
海外ではやっぱり点を取らないと認められない。
だからそういうスタイルでいく、じゃないと海外ではやっていけないって。
まぁ、日本人ならではの優しさって言うのはすごく大切なものだと思うんですけどね。
以前に新幹線で移動中にガンバ大阪のある選手が車内に財布を忘れちゃったんです。
でもちゃんと見つかって返ってきた。
それ見てある選手が「信じられない。ブラジルではありえない。」って。
(笑)
そういう優しさは文化としてとても良いものですよね。
普段の生活と試合のときと、切り替えてやれたら1番良いですね。
坂本
そうですね。
今、私たち学生はエコボランティア活動などを通じてガンバ大阪の選手と身近に接することができます。
そこには世界に目を向け、アスリートから学ぶ得難い経験の場がある。
ただ、こうした大学とプロスポーツの関係は意外に知られてなくて、学内外にもっと積極的にアピールして伝えていきたいと思います。

グローバル人材磨く「体育」の力

グローバル人材磨く「体育」の力

母校職員として勤務の傍ら、トップアスリートの社会貢献団体「アスリートネットワーク」の理事もつとめる。

ATHLETE NETWORK

坂本
地元地域、社会への貢献も忘れてはならない視点だと思います。
橋本
欧米など海外の先進国では、スポーツ選手に限らずチャリティーやボランティアなどの社会貢献が文化として根付いています。
しかし日本では残念ですが、何か偽善的な行為と誤解されやすい上に、貢献できる場自体が少ない。
坂本
そんな中、橋本選手ご自身はチャリティーに取り組まれてますよね?
橋本
難病に苦しむ子どもを励ます「クリニクラウン(臨床道化師)」のボランティア支援運動があって、半年ほど前からチャリティーグッズづくりと製品販売などに携わってきました。 きっかけは自分に子どもが生まれたことでしたが、息長く活動を続けていきたいと考えています。
今はまだ全く個人のレベルですけどね。
坂本
巽さんも、社会貢献活動をされていますよね?
巽
はい。スポーツ選手の多くは何らかの形で社会貢献をしたいと考えています。
私も母校職員として働くとともに、スポーツを通してよりよい社会づくりに貢献するトップアスリートの有志組織「アスリートネットワーク」の設立に携わり、次世代を担う子どもたちの「生きる力」を引き出す活動をしています。
坂本
私たち追大生もガンバ大阪のホームゲームで社会貢献活動として、観客に空き缶や弁当箱のゴミ分別回収を呼びかける「エコボランティア活動」に取り組んでいます。 直接の狙いは地球環境問題の意識啓発です。
橋本
試合中はスタンドに行けないので残念ながら現場は知りませんが、学生の皆さんが陰で支えてくれていることにとても感謝しています。
坂本
私たちの目標は環境意識が浸透して、みんなが自発的にゴミを分別回収するようになることです。
これからのお二人の目標は?
橋本
当面の目標で言うなら、多様なポジションをこなせるようになることかな。
長期的に長いスパンで考えると、一生涯サッカーにかかわって生きていければって思います。
やっぱり僕はサッカーが大好きなんですよ。離れられないなって。
巽
私は「体育」の重要性を教育現場にもっと深透させたいですね。
今の偏差値依存、知識重視の壁を乗り越えて、新たな「知・徳・体」のバランスの取れた教育文化の創造に貢献することが、本学院の目標であり、職員である私の目標です。
橋本
追手門の皆さんには、これを機にぜひスタジアムに足を運んでもらいたい。
ユースの生徒や学生や我々選手が奮闘する姿を見ていただいて、明日への良い刺激を受けてもらえれば嬉しい。
坂本
明確な目標を持ち、困難を乗り越えて結果を出せる人こそが、グローバル社会で通用する「独立自彊・社会有為」(追手門学院大学建学の精神)の人材となることができる。
スポーツで極めた「力」は、人生のどんな場面でも自在に発揮し得ることを今日のお話で学びました。ありがとうございました。
記念撮影

橋本選手や巽さんの発言が示すように、スポーツ=「体育」は精神力を鍛え、リーダーシップを育み、決断力を磨く。ところが、今の偏差値教育は大学受験重視で「体育」が軽視され、その結果「徳育」「知育」までもが脅かされるようになった。人づくりは「知・徳・体」が大切といわれるが、今回の対談で「体育」の重要性が指摘され、グローバル時代の要請に応えるには「スポーツが重要なカギを握る」と取材班は確信した。「追大×ガンバ大阪」の連携作戦が学校現場でしっかり受け止められるよう私たち学生も積極的にかかわっていきたい。
心理学部心理学科 1回生 杉本 恵美(超実学塾 学生広報スタッフ)