ホーム>新着情報>ニュース>【開催報告】豪亜研 2025年度 第1回研究会(7/22)
【開催報告】豪亜研 2025年度 第1回研究会(7/22)
掲載日時:2025年10月31日

 2025年7月22日(火)、オーストラリア・アジア研究所主催の学内向け研究会を開催しました。
4月に新しく所員として就任したトーマス・ブルック先生の自己紹介を兼ねた研究紹介、所員・客員研究員らの最近の研究活動報告、意見交換など、研究者間の活発な交流が行われました。

 

オーストラリア・アジア研究所では、今後も年2回程度のペースで研究会を実施し、研究活動の情報共有などを行う予定です。
交流を通じて新たな知見を得たり、研究者同士のつながりを深めることにつなげたいと考えています。

 

研究会開催風景

■研究会の様子

研究会開催風景

■発表者 トーマス・ブルック先生

 

以下、トーマス・ブルック先生からの発表レポートを掲載いたします。

 

─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─

 

演  題
「日台間の現代日本語文学から考えるトランスナショナル・ジャパンの課題」

Considering the Challenges Faced by Transnational Japan from the Perspective of Contemporary Japan-Taiwan Japanophone Literature

 

 

発 表 者:Thomas Brook (トーマス・ブルック) 
追手門学院大学国際学部講師/オーストラリア・アジア研究所所員

 

 

 

題目にある「日台間の現代日本語文学」は日本と台湾の間の移動が大きく関わっている、日本語によって書かれた文学作品のことを指しています。
私はこれまで、リービ英雄、温又柔、李琴峰という作家の文章に親しみ、台湾を一つの参照軸として、文化間移動に伴うアイデンティティの変容等に関する研究に取り組んできました。

 
イギリス出身である私は元々台湾に関心があったのではなく、これらの作家の文章を日本語で読み、ときには英語に翻訳させていただく体験を通じて、興味と親近感を抱くようになりました。このこと自体は、グローバル化の時代における日本は、単に受け身的に「世界」(西洋)の影響を受けるのみではなく、多方向的な異文化交流の現場になっていることを示しているように思います。

 

今回の研究紹介では、上記の作家3名を紹介した上で、ミックス・ルーツなど多様な文化的背景を持つ人が日本社会のより大きな部分を占めていく中で、個人および社会レベルで待ち構えている課題について考察しました。

 

台湾に出自を持つ書き手の文章は、そうした今後の日本の課題を考える上で重要な示唆を含んでいる一方、そこには日本をはじめとする宗主国による支配という痛ましい歴史も大きく関わっています。従って、その示唆を読み取る作業は、考察しようとしている〈私〉が台湾に対しどのような立ち位置にいるのかをめぐる自問自答を伴わなければならない、ということを強調しました。

 

発表を終えての質疑応答とディスカッションにおいて、出席者各自が自らの立ち位置を前置きとして共有した上で今後の日本について意見を述べてくださったことは、そのような作業の実践であるように思いました。

 
研究を進める上での重要なヒントをいくつも得ることができました。
率直な意見を共有してくださった出席者各位に改めてお礼申し上げます。

 

トーマス・ブルック

 

─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─

 

  

 本件に関するお問い合わせは
 追手門学院大学
 オーストラリア・アジア研究所 まで
 cas@otemon.ac.jp