理工学部電気電子工学科の高見剛教授が研究代表を務めるプロジェクト「固体電解質におけるフッ化物イオン伝導の制御と理解」の研究チームは、全固体フッ化物イオン電池の性能を左右するイオン伝導のメカニズムを解明し、その成果が2025年12月22日(米国時間)にアメリカ物理協会(American Institute of Physics)の科学雑誌『The Journal of Chemical Physics』に掲載されました。
本プロジェクトは、北摂地域の知的ハブとして、学際融合・産官学連携・国際協働・ベンチャー創出など多様な研究活動を一体的に進め、大学内外に新たな研究価値を創出する「共創的研究推進センター」が設ける「共創的研究奨励制度」を活用して2025年4月より始動した産学連携・学際融合型プロジェクトです。
今回の研究では、従来のリチウムイオン電池を上回るエネルギー密度を持つ「全固体フッ化物イオン電池」の実用化に向け、課題であったイオン伝導度における拡散係数とそれを支配する要因について定量的な評価が行われました。
高見教授らのチームは、モデル物質「LaF3」に対し、「テラヘルツ時間領域分光法」と「第一原理計算」を組み合わせた解析を実施。その結果、フッ化物イオン(F-)の拡散は単一の振動ではなく、広範な周波数に分布する原子振動(フォノン)による複雑な過程であることを突き止めました。特に、Fと周囲のランタン(La)との結合が緩むことで生じる特定の振動(5THz付近)が、F-の拡散を促進していることを明らかにしました。
今後は、今回解明された「原子振動とイオン伝導の関係」を新たな指針とし、合成技術の強みを生かして、より高性能な革新的イオン伝導体の創製へとつなげていきます。また、企業を含めた産学連携をさらに強化し、次世代電池技術の社会実装を目指し研究を加速させていきます。
<論文情報>
論文タイトル:Role of optical phonon in fluoride-ion conductivity of LaF3
著 者:Alex Kutana, Verdad C. Agulto, Ryoji Asahi, Yuji Sugibayashi, Makoto Nakajima, Tsuyoshi Takami
雑誌名: The Journal of Chemical Physics
DOI:10.1063/5.0299268
公開日:2025年12月22日(米国時間)
URL:https://doi.org/10.1063/5.0299268
<研究者情報>
・理工学部電気電子工学科 高見剛教授
<過去のニュース>
・共創的研究奨励制度を活用した新プロジェクトが始動 ―全固体フッ化物イオン電池の実用化に向けた学際研究がスタート








