大学紹介
2025.06.03
5月29日は学院創立記念日でした。学生の皆さんには、この日を、学院の歴史の重みを再認識し、また、歴史や積み上げられた文化とは何かを考える機会にしてほしいと思っています。
奈良国立博物館に超国宝展を観に行ってきました。法隆寺百済観音や中宮寺弥勒菩薩、石上神宮の七支刀など、全国から集められた国宝や重要文化財、その他、名品が、実にたくさん、それも通常の如く普通に並べて展示されていました。1988年に東京国立博物館で「特別展百済観音」が行われた際に、この一つの国宝のために長蛇の列ができたのと比べると、夢のような展覧会です。このような贅沢な文化体験は滅多に味わえるものではありません。大阪・関西万博に合わせての特別展とのことで、同時期に京都国立博物館と大阪市立美術館でも多くの国宝を集めた展覧会が開催されていますが、どこも大賑わいのようです。
そもそも仏像は、お寺のお堂で拝む対象であり、「文化財」と呼ぶ視線も極めて近代的なものです。例えば亀井勝一郎の『大和古寺風物誌』には、博物館で仏像を見る行為について、次のように書かれています。
"便利といえばこれほど便利なものはない。わずかの時間で尊い遺品の数々に接することができる。しかし僕らは博物館の中で、何かしら不幸ではないか。(略)博物館とは、愛情の分散を強いるようにつくられた近代の不幸なのではなかろうか。"
これは、「慣れ」のバイアスの問題でもあります。珍しければ重要視し、たくさんあるものや、何時でも何度も観られるものについては、有難味が減少するような感覚に襲われるのです。
お寺などでは、秘仏として普段は仏像が隠され、縁日など限られた日にだけそれが公開されるということも行われます。中には、七年に一度や、五十年に一度というような、厳しい限定も行われます。
またこれは時間に関してばかりではなく、場所についても同様です。普段めったに行けないような場所にあるからこそ、価値が付与されることがあります。
「慣れ」のバイアスから自由になり、常に一定の判断力を保ちながら、「文化財」を鑑賞する力をつけることは、ありとあらゆる判断力にも応用できます。脱偏見の試みとして、ぜひ、何かを鑑賞しに出かけてみてください。
2025.06.03 | 学長メッセージNo.111 「文化財」を見る眼 |
2025.04.24 | 学長メッセージNo.110 先入観と杞憂 |
2025.04.04 | 学長メッセージNo.109 DXと10年昆布 |
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