国際ウェビナー2022を開催（オーストラリア・アジア研究所）

　今日、国際情勢の複雑化・深刻化に伴い、2020年から全世界に蔓延したCOVID‐19パンデミックが続いている中、グローバルな経済・産業活動が著しいダメージを受け、社会全体のレジリエンス（弾力性・回復力）強化が求められています。一方、人工知能（AI）、量子コンピューティングやブロックチェーンなどデジタル技術の進歩、および、リモート勤務・オンライン授業やメタバース・エコシステムの構築などデジタル・トランスフォーメーション（DX）の浸透とそれによるニューノーマルな時代の形成が着々と進んでいます。
　そのような背景から、本研究所は長年の国際研究交流活動を行ってきたアジア・オセアニア地域を中心に、日本や世界の権威ある専門家たちの協力をいただき、“アジア・オセアニア地域における企業および社会の変革と再生”をテーマに、昨年度から国際ウェビナー・シリーズを開催してきました。
　今回は本シリーズの第３弾として、日豪の学者、専門家を招き、コロナ沈静後の世界経済・産業政策の変化やイノベーションの実現、および、日豪関係を中心に、政治、文化や環境など様々な角度から歴史的な経緯や経済的・地理的な実態と今後への展望について、講演と議論を交わしました。

【講演＿Prakash J. Singh氏】
　今回のウェビナーの前半では、メルボルン大学商経学部、経営・マーケティング研究科科長であるPrakash J. Singh 教授に登壇していただき、“Broken Global Supply Chains: Causes and Consequences for Japan and Australia”をテーマに、近年、突発的事件の頻発による世界的なサプライチェーンの寸断およびDXをはじめとする最先端なデジタル技術による企業のイノベーション推進の加速化という観点から、日本とオーストラリアの実態を分析しながら、今後のレジリエントな経営環境やサステナブルなサプライチェーンを構築するためのメソドロジーとインサイトを提示してくれました。

【講演＿髙佐知宏氏】
　後半では、日本経済新聞社堺支局長を務める髙佐知宏氏をお招きし、“産業面から見た日豪関係～環境・安保・地域発展〜”をテーマに、日々の生活を支えてくれるパートナーである豪州、豪州の貿易相手、開発主体として成長を支援する日本、および、通商枠組みと「自由で開かれたインド太平洋」という３つの視点から、産業面から見た日豪関係を豊富なデータをベースに、統計的かつ包括的に分析し、国・地域間の緊張や対立など地政学の急激な変化に対するオリジナルなカテゴリー化や俯瞰的な構図を提示してくれました。

【ディスカッション・セッションと今後に向けて】
　最後のディスカッション・セッションでは、日豪の産業依存度の度合いや複雑で多元化したグローバルサプライチェーンの行方などについて、先鋭的かつ切実な意見・コメントが多く寄せられ、非常に建設的な議論を展開することができました。また、今回の国際ウェビナーでは、本学の学生と教職員のみならず、大阪日豪協会、日豪貿易などに関する法務・運輸の専門家や他大学の先生方も参加され、大変有意義な国際シンポジウムを開催することができました。
　今後は本シリーズの続編として、アジア・オセアニア地域を中心に、日豪の人文・産業・自然の協力や交流、および、本地域全体の経済、文化、教育といった様々な分野の革新と発展をテーマに、継続的に国際研究交流活動を推進してまいります。これからも多くの方が関心を持って積極的に参加して頂けることを期待しています。