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菰淵寛仁特任准教授・丸野進教授(心理学部人工知能・認知科学専攻)の論文が 国際会議でBest Paper Awardを受賞
掲載日時:2024年3月21日
 

 画像エレクトロニクスとビジュアルコンピューティングに関する国際会議International Conference on Image Electronics and Visual Computing(IEVC2024)が2024年3月11日〜14日にNational Cheng Kung University(台南・台湾)で開催され、論文名"Stability Enhancement in VR Hand Manipulation through Truss Structure Connections"が「IEVC 2024 Best Paper Award」に選ばれ表彰されました。


表彰を受ける菰淵特任准教授

 

発表の詳細

 メタバースなどの仮想空間で想定されるアプリケーションの事例として、ゲームや音楽演奏などの趣味性の高いものから、外科手術、伝統工芸制作という実利に即したものまであり、求められる機能の幅は広い。中でも、現実世界と同じように手で物を掴み操作することのできるVRハンドインタラクション技術については、その機能向上に向けて、Meta社を筆頭に多くの企業、大学がしのぎを削っている。

 しかしながら、手に持った操作対象物体を指で掴んで回したり、隙間に挿入するといった自然な動作を連続的に行った場合、物体の中に指が没入してしまったり、逆に物体が指から空中に飛び出してしまったりといった、現実にはあり得ない不自然な状態が生じ、主体感を持った自由自在な動作をすることは非常に難しく、大きな課題となっていた。
 
 本研究では、解剖学的見地に立ち返り、手の個々の指の果たす役割を分析検証した結果、人間が手で物をつかむ際に、構造力学的にシンプルかつ強度の高いトラス構造(※)をうまく利用し、掴むものの大きさに応じてトラス構造の連結数を変化させていることが判明した。
 この人の手のもつ無駄のない動きを、工学的知見に基づきVRゴーグル向けに最適化したプログラムとして実装すると同時に、認知科学的知見のもとに、物を掴むという行為の裏に潜む意図の抽出を可能にする処理を実現、この意図抽出工程を加えることによって飛躍的に操作性を向上、現実世界と同じように、運動主体感や身体所有感を得ることができる仮想空間インタフェースを実現する事が出来た。
※トラス構造:細長い梁を三角形に繋ぎ合わせた建築学で広く知られた構造
   

 
コメント

<丸野進教授>

 本研究は、メタバースなどの仮想空間で、あたかも実世界にいるかのように「見たり、聞いたり、動いたり、物に触って感じる」ことのできる、主体感のある仮想空間インタフェースの実現を狙いとしたものですが、今回の受賞は、追手門学院大学における理系新分野として、AI・認知科学専攻を設立し、この分野での研究の奨励、強化推進を進めてきた成果の一つです。
 本学における研究と並行して進めている、カナダ・ケベック州のラヴァル大学との共同研究『バーチャル・シェイクハンド・プロジェクト』では、本研究が目指す、主体感のある仮想空間インタフェースを「遠隔」で実現し、医療やリハビリ分野での活用を目指したものですが、この共同研究を加速する上でも、今回の受賞は非常に重要な一歩となりました。また今回の国際会議での発表により、AI認知科学分野での本学の取り組みを広く知って頂く機会になったと同時に、AI認知科学に留まらず、広く本学の学生の交換や派遣、教員の国際交流の一層の進展、産学官連携活動にも繋がるものと期待しています。

<菰淵特任准教授>

 企業で先端研究に携わってきた実務家教員という立場から、学生の方々には『自らのアイデアを社会の役に立つ実用的な研究に進める方法』を伝えてきましたが、この受賞が『人工知能や認知科学を活かした実証実験の面白さをゼミや授業で伝える一助』になれば嬉しいです。


IEVC 2024 Best Paper Award 表彰状