オーストラリア・アジア研究所では、去る2023年4月8日(土)、国際セミナー「アジア・オセアニア地域における企業および社会の変革と再生」を開催いたしました。
【講 師】Prakash J. Singh教授(メルボルン大学)、加賀爪 優 氏(京都大学名誉教授)
【日 時】2023年4月8日(土)14:00~16:50
【場 所】追手門学院大学 茨木総持寺キャンパス
今回の国際セミナーの開催は本研究所が3年前から世界経済の不況が続く中、オセアニア・アジア地域はそのエンジン役としてますます存在感を増している一方、コロナ禍や国際情勢の激変に伴って、持続的な社会やグリーンでレジリエントなサプライチェーンの再構築が切迫の課題であることを見据えて、立ち上げた「アジア・オセアニア地域における企業および社会の変革と再生」シリーズの第4回目になりました。
今回は本学サバティカル訪問中のメルボルン大学教授Prakash J. Singh先生と京都大学名誉教授の加賀爪優先生をお招きし、それぞれのご専門領域から上述課題に対するご洞察と最新な研究成果について講演していただきました。また、今回の国際セミナーの開催にあたり、日本情報経営学会関西支部をはじめ、日本経営工学会関西支部、日本経営システム学会関西支部と日本セキュリティ・マネジメント学会関西支部研究会から多大なご協力いただき、当日、主に各学会の会員様に参加いただきました。
【第1部_メルボルン大学 Singh教授】
まず最初に、“持続可能なサプライチェーン”とは、「原材料の調達」「製品への変換」「市場への配送」「その後のリサイクルにおける一連の付加価値活動」を通じて「環境と社会の価値を維持する」という目標を実現しているものであると説明があり、それを開発するための前提条件は「サプライネットワークの完全なマップを作成すること」であると指摘されました。
そのようなマップを作成することは非常に難しい作業となりますが、豊富な研究事例を挙げながら、サプライチェーンのマッピング・プロセスの実現に必要な方法論や洞察について、幾つかの提案がありました。
最後に、サプライチェーン・マッピングの重要なステップが示されました。また、それがイノベーションの実施につながり、持続可能なサプライチェーンの開発に貢献したという実証研究の成果が、併せて披露されました。
【第2部_京都大学名誉教授 加賀爪先生】
まず冒頭で、日本とオーストラリアの両国における「エネルギー源を枯渇性資源から再生可能資源に転換する必要性」について、説明がありました。
その際には、膨大な研究データと研究成果に基づく、日豪のこの分野における実証研究が数多く披露されました。
◇事例紹介◇
・2011年3月の原発事故や東日本大震災により電力不足に陥った日本では、こうした状況を回復するため、原子力発電に代わる再生可能バイオ燃料プロジェクトを推進している。
・一方、オーストラリアでは、日本のような「穀物」ベースのバイオ燃料に加えて、「微細藻類」に基づくバイオエネルギー生産が、特に航空業界に於いてますます推進されている。
後半では、特に微細藻類に基づく航空およびバイオ燃料生産のための「バイオジェットプロジェクト」において、両国による共同開発と研究の余地が十分にあると例証されました。
また、緊密な農業資源貿易関係に加えて、両国はこれらの分野でより革新的なパートナーとなるとの、指摘がありました。
【Q&Aセッションとディスカッション】
今後は、AIやブロックチェーンなどデジタル技術の発達で、電力供給からインフラ整備までエネルギーの需要がますます高まっていきます。われわれの生活や仕事において、食品や原材料などに直結するサプライチェーンの確保が喫緊の課題であり、お二方のご研究とご提言は上述の課題を解決するには大変参考になったとコメントが寄せられました。
この国際セミナー・シリーズの開催を通じて、今後も継続的に、有意義かつ有効なソリューション案とインサイトを提供していけますよう努めてまいりたいと思います。
引き続きご協力を宜しくお願い致します。
【本件に関するお問合せ】
追手門学院大学
オーストラリア・アジア研究所
T E L:072-641-9667
email:cas@otemon.ac.jp