2024年12月10日(火)、中国の弁護士で現在は愛知県弁護士会に所属しておられる殷 偉(イン・イ)先生をお招きして、オーストラリア・アジア研究所主催の国際セミナーを開催しました。当日は、経営学部ビジネス法務専攻の学生や教職員など約15名が参加しました。
セミナーでは、「中国への渡航・滞在と法律」をテーマとして、⻑年、弁護⼠として⽇系企業や現地⽇本⼈を法的にサポートしてこられた経験をもとに、ビジネスや観光などで中国へ渡航・滞在する⽇本⼈が注意しておかなければならない中国の法律について解説していただきました。
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最近では、わが国でもコロナ禍で落ち込んだ海外渡航が回復し、日本人の中国へのビザなし入国も解禁されたことにより、中国へ渡航する邦人が増加しています。
しかし、外国⼈がビジネスや観光などで中国へ渡航・滞在するとき、現地の法律に注意しなければ、意図しないトラブルに巻き込まれる可能性があります。
そこで、殷先生からは、以下のような問題について、判例や法令の内容も含めながら具体的に教えていただきました。
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まず、中国への入国時には、最近話題となったスパイ防止法(反スパイ法)や出入国管理法といった法律が関わります。特に、日本から持込むパソコンやスマートフォン等の電子機器が当局にチェックされる可能性について詳しく教えていただきました。
また、中国滞在中に問題になりやすい事案として、現地の人や施設などをむやみにカメラや動画で撮影すると、肖像権や生活安寧権(いわゆるプライバシー権)などの人格権侵害やスパイ行為になる可能性があることや、公共の場所での発言に注意すべきことなどについて解説していただきました。
そのほか、ビジネスや労働目的で中国に滞在する際には、現地の会社法や労働法、消費者権益保護法などが関わり、賄賂など違法行為や消費者問題などに注意すべきであるということも話題として提供していただきました。
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セミナー終了後は、参加者からの個別の質問にも丁寧に対応してくださいました。
また、参加した学生からは、以下のようなコメントが寄せられました。
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- ◆「日本の法律以上に中国の法律は個人の行動に関する許容範囲が厳格に規定されていて一人一人の国民が注意しなければならないことがわかりました。日本から中国に旅行に行く際は中国国内の軍事基地を撮影する行為や中国に対する政治的発言をしないようにすることが自分の身を守ることに繋がるのだと感じました。」 (4年生男子学生)
- ◆「殷弁護士の講演会では、中国に渡航・滞在する際に必要な知識を得ることができました。昨今、在日中国人が増えていく中、我々日本人も中国について色々と知っておく必要があると感じていました。今回は中国国内の話でしたが、在日中国人の助けになれるよう自分でも中国について知識を深めておこうと思います」 (4年生男子学生)
- ◆「今回、殷偉先生のお話を聞かせていただいて、様々な注意点を学ぶことができました。先生のお話しを聞いていなかった場合、僕は飛行機で戦闘機を見ると間違いなく写真を撮ってしまっていたと思います。そのまま友人にも写真を見せることもあったと思うのでお聞きできて良かったと思います。他にも日本語でも周りに気を付けながら話すように意識しようと思いました」 (4年生男子学生)
- ◆「サプリメントの副作用や肖像権についてなどの具体例では、身近で自分が考えたり意識する場面があるため、どのような状況なのか想像がしやすかった。また、普段は聞かない法律の名前や、制限されている行為、判例紹介があり知らなかったことをたくさん学ぶことが出来ました」 (4年生女子学生)
- ◆「中国には今まで一度も訪れたことがなかったので、貴重な話を聞けた。中国では、中国人の悪口を言ってはいけなかったり、スパイ疑惑などまるで漫画の世界のようなことが決まっていて、面白いと感じる反面、少し怖かった」 (4年生女子学生)
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今回のセミナーで、参加学生たちは、他国には日本の法的ルールとは異なるルールがあること、外国に滞在中はその国の法令に違反しないよう注意して行為・行動すべきことなどを具体的に学ぶことができ、異文化理解につながったと思います。
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本セミナーは、本所のオーストラリア・アジア研究交流活動の一環として行われており、本学の国際教育や異文化接触・修養の促進にも期待できる活動です。
今後もこのような研究・教育交流活動を継続的に推進していきたいと思います。
皆様の積極的なご参加をお待ちしております。
【本件に関するお問合せ】
オーストラリア・アジア研究所
TEL:072-641-9667
E-mail: cas@otemon.ac.jp