2021(令和3)年度当初予算について

2021年度当初予算について

Ⅰ.予算編成にあたって

 今年度、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態に際し、本学院では第一に、経済的困窮に陥った学生への救済が重要と考え、それに注力してまいりました。家計急変家庭や、学生のアルバイト収入の激減などにより、修学の継続が困難な学生、すなわち学業継続のために真に必要な学生に、限られた財源からの支援を集中し、学業を不本意に諦める学生を一人も出さないをモットーに必要に応じた支援を講じてまいりました。また、このような環境下において、以前から取り組んできた授業・講義のICT活用により、本学は他校・他大学と比較しても、オンライン授業・講義への切り替えがスムーズに行われてきました。これも教職員の皆様の日ごろの努力の成果によるものです。

 2021年度予算では更なる新型コロナ対策としての支援策、また、ICT化(オンライン講義対応)への資金配分が加わることが想定されます。各学校・園ではスクラップ&ビルドにより日常的な業務遂行を見直し、コロナ禍における学校での新しい生活様式に対応していく必要があります。これを機にオンライン授業・講義の更なる開発、各種会議のオンライン化やAIを活用したChatBotの導入、ペーパーレスをはじめ各種資料の電子化、各種手続きのオンライン化の準備を進めていただきたいと思います。

 前述したとおり非常に厳しい環境下、限られた資金を有効に活用するため、全ての部門で今一度予算編成にあたって業務を見直し、本当に必要な事業であるか徹底的に精査をお願いします。あらためて言及するまでもなく、本学の収入は園児・児童・生徒・学生の保護者から頂く授業料(保育料)が事業収入の70%を占めており、次に収入規模が大きい補助金と合わせると事業収入の85%強となります。このことを念頭において、常にその経費は授業料(保育料)または補助金をもって支払うことに値するのかを意識して予算要求を行っていただきたいと考えます。

 なお、一方で今後の競争を勝ち抜くためには教育・研究体制の更なる充実を図る必要があります。2020年度予算と同様、CAP額とは別に予算枠(学長裁量経費)を設置し、重点強化すべき新規事業については資金投下が可能になる予算制度を検討しています。強固な財政基盤を確立しつつ、新たな事業への投資整備を行う予定です。

Ⅱ.予算編成の方針

【ICT化・オンライン化の加速を意識した予算】
【スクラップ&ビルドの徹底】
【選択的・集中的な資金投下】
【費用対効果を十分に意識した事業計画】
【補助金(外部資金)の計画的・積極的な確保】

Ⅲ.収支予算の要旨

(1)事業活動収支予算

 教育活動収入計は、144 億 2,229 万円となり、対前年で 3 億 6,871 万円の減(対前年 2.5% 減)となる見込みである。

 教育活動収入計を構成する主な科目は、学生生徒等納付金と経常費等補助金であり、この2科目で教育活動収入全体の約93%を占めている。

 学生生徒等納付金は、学生・生徒・児童・園児数合計の増と、大学で前年度に行った授業料値上げの年次進行による増、両高等学校における就学支援金の増(授業料支援補助金は減)などにより、対前年5億9,966万円増(対前年5.9%増)の107億7,632万円となった。経常費等補助金は、大学における学生数増に伴う高等教育修学支援金の増と、両高等学校における授業料支援補助金の減(就学支援金は増)の差し引きで、対前年4,019万円減(対前年1.5% 減)の26億6,325万円となっている。

 なお、5 月 1 日付けの学生・生徒・児童・園児の予定数については、新入生数を大学は学則定員(2,026名)の約1.04倍の2,107名(対前年△95名減)と見込み、中学校は80名(前年予算と同数)、高等学校は340名(前年予算と同数)、大手前中学校は105名(前年予算と同数)、大手前高等学校は240名(対前年△1名減)、小学校は144名(前年予算と同数)、幼稚園は年少で115名(対前年△2名減)、0歳児6名(前年予算と同数)を見込んでいる。この結果、各学舎の総人数は、大学7,722名(対前年314名増)、中・高等学校1,292名(対前年△152名減)、大手前中・高等学校1,037名(対前年18名増)、小学校884名(対前年4名増)、幼稚園392名(対前年△7名減)の計11,327名となり、学院全体としての人数は前年度と比較して177名の増と見込んでいる。

 学生生徒等納付金が 5 億 9,966 万円の増となる一方で、教育活動収入計が対前年で 3 億6,871 万円の減となる主な要因は、前年度に受け入れた井谷奨学基金に関する株式の現物寄付 8 億 6,100 万円及びコロナ関連の特別寄付 1 億 1,020 万円の減に伴う寄付金の減によるものである。

 一方で、教育活動支出計は142億740万円となり、対前年で6,865万円の減(対前年0.5% 減)となる見込みである。

 教育活動支出計の構成科目は人件費、教育研究経費、管理経費であり、教育活動支出計の減は人件費の増と教育研究経費及び管理経費の減の差引きによるものである。

 人件費は、対前年 1 億 6,418 万円増(対前年 2.7%増)の 62 億 685 万円となっている。人 件費のうち、退職給与引当金繰入額(役員分を含む)は 2,140 万円の増となる見込みから、これを除く経常人件費は 1 億 4,278 万円の増となっている。その主な要因は、大学の教員人件費が本務教員14名増に伴い対前年で1億6,213万円の増となっていることである。

 教育研究経費と管理経費については、それぞれの学校にて立案している事業計画の実施及び通常経費の計上に基づくものであり、事業計画については前述のとおりである。

 教育研究経費は、大学において総持寺キャンパス 2 期計画に向けた埋蔵文化財の本掘費用や、高等教育修学支援金に係る奨学費の増がある一方で、前年度の安威キャンパスBYOD対応や安威キャンパス再整備が本年度は予算計上されないことによる減などの差し引きにより、対前年1億69万円減(対前年1.5%減)の64億6,078万円となっている。

 管理経費は、法人部門において新学部設置関連費用や派遣職員費用が増となる一方で、大学において前年度の食堂棟GHP更新工事や安威キャンパスBYOD対応が本年度は予算計上されないことによる減などの差し引きにより、対前年 1 億 3,214 万円減(対前年 7.9%減)の 15 億3,977万円となっている以上から、教育活動の収支状況を表す教育活動収支差額は、対前年 3 億 6 万円減(対前年58.3%減)の2億1,489万円の収入超過となる見込みである。

 次に、経常的な収支のうち財務活動による収支状況を表す教育活動外収支には、収入の部に受取利息・配当金を計上しており、支出の部に借入金等利息を計上している。

 受取利息・配当金は、大学において世界景気の回復を背景とした運用資金における受取配当金の増と、前年度に受け入れた井谷奨学基金に関する株式の現物寄付による受取配当金の増により、対前年5,338万円増(対前年190.9%増)の8,135万円を計上している。

 借入金利息は、大学において2017年度と2018年度に新キャンパス建設資金として借り入れた 資金に対する借入金利息として1,436万円を計上している。毎年の返済に伴い、対前年98万円減(対前年6.4%減)となっている。

 以上から、教育活動外収支差額は対前年5,436万円増(対前年430.6%増)の6,699万円となり、教育活動収支と教育活動外収支を合計した、経常的な収支バランスを表す経常収支差額は対前年 2 億 4,569 万円減(対前年 46.6%減)の 2 億 8,188 万円の収入超過となる見込みである。

 さらに、臨時的な収支を表す特別収支には、収入の部に資産売却差額とその他の収入を計上しており、支出の部に資産処分差額とその他の特別支出を計上している。

 資産売却差額は、大学において前年度の安威キャンパス東側土地の売却差額が本年度は予算計上されないことにより、対前年38億7,843万円減(対前年98.7%減)の5,000万円を計上している。

 また資産処分差額は、大学において前年度の安威キャンパス東側土地の売却に伴うグラウ ンド倉庫等の処分差額が本年度は計上されないことにより、対前年 6,837 万円減(対前年55.0%減)の5,593万円を計上している。

 以上から、特別収支差額は、対前年38億935万円減(対前年100.1%減)の235万円の支出超過となる見込みである。

 これに予備費を加味した結果、当年度の収支バランスを表す基本金組入前当年度収支差額は、対前年40億5,504万円減の1億7,953万円の収入超過の見込みとなり、経営指標とされる事業活動収支差額比率は1.2%(対前年21.4ポイント減)となる見込みである。

 ただし、前年度数値から特有事項(安威キャンパス東側土地の売却差額、各種寄付、安威キャンパスBYOD対応と安威キャンパス再整備に係る経費など)を除いたベースでの比較では、基本金組入前当年度収支差額は前年度の 1 億 5,111 万円から 2,842 万円増、事業活動収支差額比率は前年度の1.1%から0.1ポイント増となる見込みである。

 そして、今年度の基本金組入額は 30 億 7,258 万円を予定しており、対前年 38 億 483 万円の組入減となっている。組入減の主な要因は、大学において総持寺キャンパス 2 期計画に係る第2号基本金につき、前年度は安威キャンパス東側土地の売却収入を原資として51億円の組入れを行ったが、本年度は15億円の組入れを行うことによる36億円の減である。

 今における組入額の内訳は、第1号基本金組入額が13億6,033万円、第2号基本金組入額が上述のとおり15億円、第4号基本金組入額が計算基礎となる前年度教育研究経費の増加による 2 億 1,225 万円である。なお、第 1 号基本金組入額の主な内容は、大学における総持寺キャンパス建設(1 期)に係る借入金の返済や総持寺キャンパス 2 期計画などによる組入れ 7 億 6,302 万円、小学校における本館記念ホール天井の改修や北館(特別教室)の空調更新などによる組入れ3億3,287万円である。

 以上から、前年度繰越収支差額を加味した翌年度繰越収支差額は、165 億 9,334 万円の支出超過となる見込みである。


(2)資金収支予算

 資金収入の部(前年度繰越支払資金を除く)については、当年度収入合計が201億6,744万円となり、対前年で36億4,670万円の減(対前年15.3%減)となる見込みである。

 事業活動収支で説明した科目以外で予算計上額が大きな科目は、資産売却収入、前受金収入、その他の収入、資金収入調整勘定である。対前年で減となる主な要因は、資産売却収入の減である。

・資産売却収入は、大学において前年度の安威キャンパス東側土地の売却収入40億6,395万円が本年度は予算計上されないことなどにより、対前年40億8,446万円減(対前年88.8%減)の5億1,547万円となっている。

・前受金収入は、16億7,828万円となる見込みで、対前年3,282万円の増(対前年2.0%増)となる。

・その他の収入は52億4,267万円となる見込みで、対前年5億6,160万円の減(対前年9.7%減)となる。主な要因は、大学における前年度の安威キャンパスBYOD対応や安威キャンパス再整備といった大型案件減に伴う施設設備引当特定資産取崩収入の減と、大手前中高や小学校の改修案件増に伴う施設建設引当特定資産取崩収入の増との差引きである。

・資金収入調整勘定は△17億7,114万円となり、前年度の△21億9,320万円より4億2,205万円のマイナス幅の縮小(当年度収入としては増)となる。主な要因は、大学において前年度に安威キャンパス東側土地の売却収入40億6,395万円のうち、2018年度に収受していた前受金4億639万円を調整していたものが本年度は予算計上されないことに伴い、前期末前受金のマイナス幅が縮小したことである。


 一方で、資金支出の部(翌年度繰越支払資金を除く)については、当年度支出合計が202億8,937万円となり、対前年で44億5,363万円の減(対前年18.0%減)となる見込みである。

 事業活動収支で説明した科目以外で予算計上額が大きな科目は、資産運用支出、その他の支出である。対前年で減となる主な要因は、資産運用支出の減である。

・資産運用支出は25億7,745万円となり、前年度より40億7,315万円の減(対前年61.2%減)となる。主な要因は、大学において総持寺キャンパス2期計画に係る第2号基本金引当特定資産につき、前年度は安威キャンパス東側土地の売却収入を原資として51億円の繰入れを行ったが、本年度は15億円の繰入れを行うことによる36億円の減である。

・その他の支出は39億6,283万円となり、対前年4億3.593万円の減(対前年9.9%減)となる。減となる主な要因は、大学における前年度の安威キャンパス再整備関係の支払の減に伴う前期末未払金支払支出の減である。


 この結果、当年度の収入合計から支出合計を差引いた支払資金の増減額は△1億2,193万円となり、これに前年度繰越支払資金を加算した翌年度繰越支払資金は53億7,641万円となる見込みである。

以 上