2023(令和5)年度当初予算概要について

2023(令和5)年度 当初予算について

Ⅰ.予算編成にあたって

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響が長期化し、感染対策と社会活動の両立が進んでいる一方で、オミクロン株の変異等により再び感染者数が増加するなど、未だ収束時期が見通せない不安定な状況が続いております。そのような中でも、各学校・園においては、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた新たな体制が整えられています。活動が制限されていても、BYOD(Bring Your Own Device)を最大限活用した講義・授業展開や、新しい形の国際交流や学校行事を実施する等、教育のDXを進めてまいりました。これも教職員の皆さまのご協力があってのことだと、深く感謝申し上げます。

 さて、本学院は2022年度から6年間の第Ⅳ期中期経営戦略を策定しました。第Ⅳ期中期経営戦略のグランドビジョンは「変わらない価値と変わる新しい価値を融合した教育・研究を実践し、個々の集結によってイノベーションを創出する総合学院」です。特に第Ⅳ期の6年間のうち、前半の3年間は、学院経営の飛躍を図るべく大事業を集約させました。総持寺Ⅱ期棟の2025年4月運用開始に向けて、大学学部の大半の移転、本部を含めた事務機能の全面移転のため、あらゆる準備を進めております。2022年4月からは、追大に国際学部、文学部を開設し7学部体制になりました。2023年4月には、法学部を設置すべく準備中です。茨木中高では、2022年4月から新たに創造コースを設け、教科授業でも探究プログラム型授業を展開しました。大手前中高でも、GA・GSコースをスタートさせ、先進的なグローバル教育、高度且つ専門的なサイエンス教育を実践しています。小学校やこども園では、主体的な探究心を培う先進的なICT教育をさらに充実させた展開をしています。学院の長期的な発展のためには、教育の質を高め、学院のブランドをアップさせる経営が不可欠です。
 前述のとおり今後も学院として大きなチャレンジが継続します。限られた資金を有効に活用するため、全ての部門で今一度予算編成にあたって業務を見直し、本当に必要な事業であるか徹底的に精査をお願いします。あらためて言及するまでもなく、本学の収入は園児・児童・生徒・学生の保護者から頂く授業料(保育料)が事業収入の70%を占めており、次に収入規模が大きい補助金と合わせると事業収入の85%強となります。このことを念頭において、常にその経費は授業料(保育料)または補助金をもって支払うことに値するのかを意識して予算要求を行っていただきたいと考えます。
 これまでの常識にとらわれず、当たり前のことが当たり前ではなくなる世の中に柔軟に対応できる、しなやかで強い追手門学院でありたいと思います。2023年度は、第Ⅳ期中期経営戦略の2年目となります。「イノベーションを創出する総合学院」の実現を目指し、それぞれの目標達成に向けて、より一層のご協力をお願い致します。

Ⅱ.予算編成の方針

【スクラップ&ビルドの徹底】
【教育DX、経営DXの加速を意識した予算】
【入口・出口戦略など選択的・集中的な資金投下】
【費用対効果を十分に意識した事業計画】
【補助金(外部資金)の計画的・積極的な獲得】


Ⅲ.収支予算の要旨

(1)事業活動収支予算


教育活動収支差額:1,033百万円 前年度予算比742百万円(254.6%)増加
●教育活動収入:16,023百万円 前年度予算比994百万円(6.6%)増加
教育活動収入を構成する主な科目は、学生生徒等納付金と経常費等補助金であり、この2科目で教育活動収入全体の約94%を占めている。

‒学生生徒納付金:12,110百万円 前年度予算比899百万円(8.0%)増加
前年予算比増の主な要因は、大学で法学部の開設に伴う収容定員の増や、2020年度に行った授業料値上げの年次進行による増、社会学部・地域創造学部の収容定員増の年次進行に伴う増、2021年度まで国際教養学部のみであった教育充実費を全学部徴収としたことによる増の他、高等学校で生徒数の少なかった3年生の卒業などに伴う生徒数増による収入増などである。
‒経常費等補助金:2,935百万円 前年度予算比94百万円(3.3%)増加
前年予算比増の主な要因は、高等学校で生徒数増加に伴う経常費補助金の増などである。
●教育活動支出:14,990百万円 前年度予算比252百万円(1.7%)増加
教育活動支出の構成科目は人件費、教育研究経費、管理経費であり、教育活動支出の増は人件費と教育研究経費の増と管理経費の減の差引きによるものである。教育研究経費と管理経費については、それぞれの学校にて立案している事業計画の実施及び通常経費の計上に基づくものである。
‒人件費:6,657百万円 前年度予算比195百万円(3.0%)増加
人件費のうち、退職給与引当金繰入額(役員分を含む)は67百万円の減となる見込みから、これを除く経常人件費は262百万円の増となっている。その主な要因は、教員人件費が、大学の本務教員10名増に伴い対前年で161百万円の増となることにより、253百万円増加することなどによる。
‒教育研究経費:6,831百万円 前年度予算比190百万円(2.9%)増加
前年予算比増の主な要因は、燃料費高騰などの影響を受け単価増となることに伴う光熱水費の大幅増や、大学における国際学部グローバルスタディーズ専攻の入学者増を見込むことに伴う留学費用の増などによる支払手数料・報酬の増、大学における派遣職員の増や高等学校及び大手前高校でクラブ指導の外部委託を拡大したことによる業務委託費の増、小学校における本館屋上改修などによる修繕費の増、電子化・ペーパーレスの推進による印刷製本費の減などの差し引きによる。
‒管理経費:1,502百万円 前年度予算比133百万円(8.1%)減少
前年予算比減の主な要因は、大学における入試広報費の減、前年度計上したアクセンチュアへの働き方改革支援に係る支払手数料の減、前年度計上していた事務系端末の更新がなくなることによる用品費の減と、O&Cセンター開設に伴う業務委託の拡大による業務委託費の増、燃料費高騰などの影響による光熱水費の増などの差し引きによる。
以上より、教育活動の収支状況を表す教育活動収支差額は、対前年予算比742百万円(254.6%)増の1,033百万円の収入超過となる見込みである。

教育活動外収支差額:71百万円 前年度予算比38百万円(34.8%)減少
●教育活動外収入:83百万円 前年度予算比39百万円(32.1%)減少
教育活動外収入を構成する主な科目は受取利息・配当金であり、大学において投資信託の分配金の減などにより、対前度予算比40百万円(43.2%)減の83百万円を計上している。
●教育活動外支出:12百万円 前年度予算比1百万円(9.6%)減少
教育活動外支出には、大学において2017年度と2018年度に新キャンパス建設資金として借り入れた資金に対する借入金利息12百万円を計上している。毎年の返済による元金の減少に伴う利払いの減少で対前年度予算比1百万円(9.6%)減となっている。
以上より、教育活動外収支差額は対前年度予算比38百万円(34.8%)減の71百万円となり、教育活動収支と教育活動外収支を合計した、経常的な収支バランスを表す経常収支差額は対前年度予算比704百万円(175.6%)増の1,105百万円の収入超過となる見込みである。

特別収支差額:14百万円 前年度予算比3百万円(19.5%)減少
臨時的な収支を表す特別収支には、収入の部に資産売却差額とその他の特別収入を計上しており、支出の部に資産処分差額を計上している。
●特別収入:64百万円 前年度予算比32百万円(33.1%)減少
資産売却差額は、大学における資産運用に係る投資信託の売却益を見込み、前年同額の60百万円を計上している。その他の特別収入は前年度予算で小学校において計上した110記念ホール天井改修工事に伴う私立学校施設整備費補助金がなくなることにより前年度予算比33百万円減少となっている。
●特別支出:50百万円 前年度予算比28百万円(36.2%)減少
資産処分差額は、大学において他大学から寄贈を受けた図書を精査し、重複分や汚損分などを処分したことに伴う除却損を前年度に計上していたものが当年度なくなることなどにより対前年度予算比28百万円(36.2%)減の50百万円を計上している。なお、50百万円は資産運用に係る投資信託の売却損を見込んだものである。
以上より、特別収支差額は、対前年度予算比3百万円減の14百万円の収入超過となる見込みである。

基本金組入前当年度収支差額:679百万円 前年度予算比490百万円(260.0%)増加
経常収支差額、特別収支差額に予備費を加味した結果、当年度の収支バランスを表す基本金組入前当年度収支差額は、対前年度予算比490百万円(260.0%)増の679百万円の収入超過の見込みとなり、経営指標とされる事業活動収支差額比率は4.2%(対前年度予算比3.0ポイント増)となる見込みである。
これに加え、当年度の基本金組入額は940百万円を予定しており、対前年350百万円の組入減となっている。組入減の主な要因は、前年度発生した小学校の110記念ホール天井改修工事199百万円、大手前高等学校の全熱交換機更新115百万円がなくなることなどである。
今年度における組入額の内訳は、第1号基本金組入額が718百万円(2号基本金からの振替分4,095百万円を除く)、計算基礎となる2022年度教育研究経費の増加に伴う第4号基本金組入額が221百万円である。なお、第1号基本金組入額の主な内容は、大学における各棟電気錠コントローラー更新、体育館第1体育室空調設置工事、管理センター非常放送設備工事などの建物更新で145百万円、長期借入金返済に伴う過年度未組入れに係る組入れ411百万円などである。
なお、基本金取崩額は幼稚園の1百万円のみである。

 以上から算出される当年度収支差額に前年度繰越収支差額を加味した翌年度繰越収支差額は、14,245百万円の支出超過となる見込みである。

(2)資金収支予算

●当年度収入:24,917百万円 前年度予算比3,559百万円(16.7%)増加
(当年度収入=収入の部合計31,369百万円-前年度繰越支払資金6,452百万円)
事業活動収支で説明した科目以外で予算計上額が大きな科目は、前受金収入、その他の収入、資金収入調整勘定である。対前年予算比で増となる主な要因は、学生生徒等納付金収入の他、その他の収入の増である。
‒その他の収入:8,343百万円 前年度予算比2,713百万円(48.2%)増加
増加の主な要因は、以下の通りである。
・当年度、大学において総持寺キャンパスⅡ期計画に係る第2号基本金引当特定資産取崩収入4,095百万円(対前年2,596百万円増)が発生すること
・当年度、大学において実施予定である1号館外壁クラック補修、1号館・中央棟インターロッキング舗装補修工事、中央棟加圧給水ポンプ更新、体育館GHP更新、北側道路拡幅工事、4号館受変電設備改修工事、バイク置場整備工事などに係る施設設備引当特定資産取崩収入564百万円(前年度計上なし)が発生すること
・2022年度に見込んでいた小学校における本館110記念ホール天井改修工事、大手前中高における全熱交換機更新などがなくなることと、小学校における本館屋上改修の発生との差し引きなどにより施設建設引当特定資産取崩収入が294百万円減少すること
・年度末退職者に係る退職金財団給付金の減などにより、前期末未収入金収入が150百万円減となること
‒前受金収入:1,892百万円 前年度予算比1百万円(0.0%)増加
前受金収入はほぼ前年度予算並みとなる見込みである。
‒資金収入調整勘定:△1,933百万円 前年度予算比△78百万円(マイナス調整額が増加)
法学部開設に伴う授業料前受金の増などにより前期末前受金のマイナス幅が121百万円拡大(当年度収入としては減)することと、年度末退職者に対する退職金財団からの交付金が減となることなどにより期末未収入金のマイナス幅が42百万円縮小(当年度収入としては増)することの差し引きにより、前年度予算比でマイナス調整額が増となった。

●当年度支出:24,558百万円 前年度予算比1,941百万円(8.6%)増加
 (当年度支出=支出の部合計31,369百万円-翌年度繰越支払資金6,811百万円)
事業活動収支で説明した科目以外で予算計上額が大きな科目は、施設関係支出、資産運用支出、その他の支出である。
‒施設関係支出:4,323百万円 前年度予算比2,146百万円(98.6%)増加
主な増加要因は、当年度大学において総持寺キャンパスⅡ期計画に係る建設仮勘定支出4,092百万円(前年度は1,498百万円)を計上する一方で、前年度小学校において計上した本館110記念ホール天井改修工事199百万円、大手前中高において計上した全熱交換機更新115百万円がなくなることなどによる差し引きである。
‒資産運用支出:2,684百万円 前年度予算比203百万円(7.0%)減少
主な減少要因は、小学校において施設建設引当特定資産繰入支出が184百万円減となったことや、大学において奨学費等引当特定資産繰入支出が28百万円減となったことなどによる。
‒その他支出:3,789百万円 前年度予算比477百万円(11.2%)減少
主な減少要因は、大学において前年度計上した総持寺キャンパスⅡ期工事伴う埋蔵文化財本調査費用151百万円がなくなること、法人において前年度計上した法学部などの広報費42百万円や働き方改革支援に係る支払手数料11百万円などがなくなることなどによる業者への未払金減少、年度末退職者への退職金の未払額の減73百万円などに伴い前期末未払金支払支出が減少したことなどによる。

●翌年度繰越支払資金:6,811百万円 前年度予算比359百万円(5.6%)増加
以上より、当年度収入合計24,917百万円から当年度支出合計24,558百万円を差引いた支払資金の増減額は359百万円の増となり、これに前年度繰越支払資金を加算した翌年度繰越支払資金は6,811百万円(前年度は6,452百万円)となる見込みである。

以上