2022(令和4)年度当初予算概要について

2022(令和4)年度 当初予算について

1.予算編成にあたって

 昨年は、新型コロナウイルス感染問題が世界を震撼させた一年でした。卒業式、入学式を始めとする恒例の学院行事がことごとく中止に追いやられた年でもありました。その中でも、わが追手門学院は、以前からBYODに取り組んでいたことが功を奏し、いち早くオンライン授業に切り替え、コロナ禍でもすべての学院生の学習の継続が実現しました。各校園でも、様々な工夫をこらした教育展開を実践することができました。また、コロナ禍での経済的困窮を理由に一人も退学者を出させないという観点から5億円のコロナ救済基金を創設し様々な方から支援を頂きました。卒業生や保護者も含め学院全体がまさに一丸となって、コロナ禍に立ち向かって、追手門学院の結束の力を発揮しました。

 甚大な弊害をもたらしたコロナ禍の収束にはまだまだ時間を要します。反面、これを機に、業務展開、教育手法、生活様式に従来の殻を破る新たな基準、すなわちニューノーマルの積極的活用が求められています。教育手法において、リモート授業を積極的に取り入れ、WEBを活用した会議運営、テレワークと称する仕事の関わり方などが今後のITを活用したビジネスモデルや組織改革をすることであり、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進します。今回の皆様方の経験や努力を踏まえ、デジタル技術の導入を進めていくことが、次の新しい教育展開となり、それが業務改善につながります。コロナ禍を新たなチャレンジの機会、イノベーションを生み出す契機として行きます。 本学が公表している長期計画2030の実現に向けて、コロナ禍を変革のチャンスととらえています。今年はさらに発展をめざします。とくに次の3点を進めたいと思います。

①どのような事態であっても学びを止めないための学校機能の強化
②オンライン化のさらなる推進による新たな教育の創出
③教育現場における働き方改革

 組織と人の改革とともに、教育や研究の環境をさらに整え、働きがいのある職場づくりを目指します。総持寺のⅡ期棟建設計画も進んでいます。コロナを契機に、学びの形が変わりました。Ⅱ期工事には、教職員へのヒヤリングを踏まえて新たな学びの形を反映していく予定です。
 前述したとおり非常に変化の大きい環境下、限られた資金を有効に活用するため、全ての部門で今一度予算編成にあたって業務を見直し、本当に必要な事業であるか徹底的に精査をお願いします。あらためて言及するまでもなく、本学の収入は園児・児童・生徒・学生の保護者から頂く授業料(保育料)が事業収入の70%を占めており、次に収入規模が大きい補助金と合わせると事業収入の85%強となります。このことを念頭において、常にその経費は授業料(保育料)または補助金をもって支払うことに値するのかを意識して予算要求を行っていただきたいと考えます。
 これまでの常識にとらわれず、当たり前のことが当たり前ではなくなる世の中に柔軟に対応できる、しなやかで強い追手門学院でありたいと思います。2021年度は、第Ⅲ期中期経営戦略の最終年度です。それぞれの目標達成に向けて、より一層のご協力をお願いします。

2.予算編成の方針

【ICT化・オンライン化の加速を意識した予算】
【スクラップ&ビルドの徹底】
【入口・出口戦略など選択的・集中的な資金投下】
【費用対効果を十分に意識した事業計画】
【補助金(外部資金)の計画的・積極的な確保】

3.収支予算の要旨

(1)事業活動収支予算


 教育活動収入計は、149億9,848万円となり、対前年で6億6,118万円の減(対前年4.2%減)となる見込みである。
教育活動収入計を構成する主な科目は、学生生徒等納付金と経常費等補助金であり、この2科目で教育活動収入全体の約94%を占めている。
 学生生徒等納付金は、中高等学校で生徒数の多かった3年生の卒業に伴う生徒数減による収入減等があるものの、大学で2020年度に行った授業料値上げの年次進行による増や社会学部・地域創造学部の収容定員増の年次進行に伴う増、2021年度まで国際教養学部のみであった教育充実費を全学部からの徴収とすることによる増などにより、対前年4億4,867万円増(対前年4.2%増)の112億2,499万円となった。経常費等補助金は、大学における採用学生数増に伴う高等教育修学支援金の増(同額奨学費支出が増加するため事業活動収支差額には影響なし)、経常費補助金の主に一般補助の増額の影響などにより、対前年7,181万円増(対前年2.6%増)の28億3,941万円となっている。
 なお、2022年5月1日付けの学生・生徒・児童・園児の予定数は、新入生数を大学は学則定員(1,973名)の1.00倍の1,973名(対前年△79名)と見込み、中学校は80名(前年予算と同数)、高等学校は400名(対前年60名増)、大手前中学校は105名(前年予算と同数)、大手前高等学校は235名(対前年△5名)、小学校は140名(対前年△4名)、幼稚園は年少で120名(対前年5名増)、0歳児6名(前年予算と同数)を見込んでいる。この結果、各学舎の総人数は、大学7,841名(対前年119名増)、中・高等学校1,218名(対前年△74名)、大手前中・高等学校1,046名(対前年9名増)、小学校877名(対前年△7名)、幼稚園389名(対前年△3名)の計11,485名となり、学院全体としての人数は2021年度と比較して158名の増と見込んでいる。
学生生徒等納付金が4億4,867万円の増となる一方で、教育活動収入計が対前年で6億6,118万円の減となる主な要因は、2021年度に受け入れた井谷奨学基金に関する株式の現物寄付11億1,600万円の減に伴う寄付金の減によるものである。
    
 一方で、教育活動支出計は144億1,233万円となり、対前年で8,496万円の減(対前年0.6%減)となる見込みである。
教育活動支出計の構成科目は人件費、教育研究経費、管理経費であり、教育活動支出計の減は人件費の増と教育研究経費及び管理経費の減の差引きによるものである。
 人件費は、対前年1億7,126万円増(対前年2.8%増)の63億7,811万円となっている。人件費のうち、退職給与引当金繰入額(役員分を含む)は3,613万円の増となる見込みから、これを除く経常人件費は1億3,513万円の増となっている。その主な要因は、教員人件費が大学の本務教員15名増に伴い対前年で1億7,958万円の増となることなどにより1億7,551万円増加することと、職員人件費が本務職員5名減などに伴い4,048万円減少することの差し引きによる。
教育研究経費と管理経費については、それぞれの学校にて立案している事業計画の実施及び通常経費の計上に基づくものである。
 教育研究経費は、2021年度大学において計上した総持寺キャンパスⅡ期計画に係る埋蔵文化財発掘調査費用がなくなることや一部経費について科目精査により業務委託費に振り替えたことなどによる支払手数料・報酬の減少、小学校において計上した本館外壁補修工事や正面庇雨漏改修工事などがなくなることに伴う修繕費の減少などと、大学における高等教育の修学支援制度の採用学生増加に伴う奨学費の増加(同額経常費等補助金が増加)や一部経費について科目精査により支払手数料・報酬からの振り替えによる業務委託費の増加などの差し引きにより対前年1億4,313万円減(対前年2.2%減)の64億7,853万円となっている。
 管理経費は、2021年度計上したアクセンチュアへの働き方改革支援に係る支払手数料の減少、大学における学生寮の減少に伴う賃借料の減少などにより対前年1億1,308万円減(対前年6.8%減)の15億5,569万円となっている。
 以上から、教育活動の収支状況を表す教育活動収支差額は、対前年5億7,622万円減(対前年49.6%減)の5億8,615万円の収入超過となる見込みである。

 次に、経常的な収支のうち財務活動による収支状況を表す教育活動外収支には、収入の部に受取利息・配当金を計上しており、支出の部に借入金等利息を計上している。
 受取利息・配当金は、大学において投資信託の分配金の増と、2021年度に受け入れた井谷奨学基金に関する株式の現物寄付による受取配当金の増により、対前年4,122万円増(対前年50.7%増)の1億2,257万円を計上している。
 借入金利息は、大学において2017年度と2018年度に新キャンパス建設資金として借り入れた資金に対する借入金利息として1,311万円を計上している。毎年の返済による元金の減少に伴う利払いの減少で対前年126万円減(対前年8.8%減)となっている。
 以上から、教育活動外収支差額は対前年4,248万円増(対前年63.4%増)の1億947万円となり、教育活動収支と教育活動外収支を合計した、経常的な収支バランスを表す経常収支差額は対前年5億3,374万円減(対前年43.4%減)の6億9,562万円の収入超過となる見込みである。

 さらに、臨時的な収支を表す特別収支には、収入の部に資産売却差額とその他の特別収入を計上しており、支出の部に資産処分差額を計上している。
資産売却差額は、大学において資産運用に係る投資信託の売却益の増を見込み対前年1,000万円増(対前年20.0%増)の6,000万円を計上している。
また資産処分差額は、老朽化等による設備更新に伴う設備除却や、大学において資産運用に係る投資信託の売却損を5,000万円計上することにより対前年58万円減(対前年1.0%減)の5,536万円を計上している。
  以上から、特別収支差額は、対前年1,037万円増の802万円の収入超過となる見込みである。

  これに予備費を加味した結果、当年度の収支バランスを表す基本金組入前当年度収支差額は、対前年6億5,337万円減(対前年58.0%減)の4億7,363万円の収入超過の見込みとなり、経営指標とされる事業活動収支差額比率は3.1%(対前年4.0ポイント減)となる見込みである。
  ただし、2021年度数値から特有事項である井谷氏からの株式寄付を除いたベースでの比較では、基本金組入前当年度収支差額は2021年度の1,101万円から4億6,263万円増、事業活動収支差額比率は2021年度の0.1%から3.0ポイント増となる見込みである。
 そして、今年度の基本金組入額は13億1,152万円を予定しており、対前年28億9,343万円の組入減となっている。組入減の主な要因は、大学において2021年度発生した総持寺キャンパスⅡ期計画に係る第2号基本金の組み入れ15億円、井谷氏からの株式寄付に係る第3号基本金の組み入れ11億1,600万円がなくなることと、第1号基本金組入額の減少によるものである。
 今年度における組入額の内訳は、第1号基本金組入額が10億8,466万円、計算基礎となる2021年度教育研究経費の増加に伴う第4号基本金組入額が2億2,686万円である。なお、第1号基本金組入額の主な内容は、大学における中央監視装置・各棟リモート盤更新、管理センター自動火災報知設備防災表示設備等の2億6,829万円、小学校における本館110記念ホール天井改修工事1億9,910万円、大手前中高における空調・全熱交換機更新の1億1,514万円などである。
また、基本金取崩額は6,322万円である。全額が老朽化による設備除却等に伴う第1号基本金の取り崩しであり、大手前中学校で4,033万円、法人部門で2,289万円を計上している。

 以上から、2021年度繰越収支差額を加味した翌年度繰越収支差額は、163億7,692万円の支出超過となる見込みである。

(2)資金収支予算

 資金収入の部(2021年度繰越支払資金を除く)については、当年度収入合計が212億6,366万円となり、対前年で9億1,122万円の増(対前年4.5%増)となる見込みである。
 事業活動収支で説明した科目以外で予算計上額が大きな科目は、前受金収入、その他の収入、資金収入調整勘定である。対前年で増となる主な要因は、学生生徒等納付金収入の他、前受金収入、その他の収入の増である。

・前受金収入は、18億9,107万円となる見込みで、対前年2億1,278万円の増(対前年12.7%増)となる。主な要因は、法人部門において主に2023年度開設予定の法学部設置に伴う収容定員増(230名)で授業料前受金収入、入学金前受金収入及び施設設備資金前受金収入を計上したことと、大学において2022年度開設予定の国際学部のグローバルスタディーズ専攻に係る実験実習料前受金収入を計上したことなどである。
その他の収入は55億2,623万円となる見込みで、対前年1億8,962万円の増(対前年3.6%増)となる。主な要因は、
  • ① 当年度大学において総持寺キャンパスⅡ期計画に係る第2号基本金引当特定資産取崩収入14億9,802万円が発生すること
  • ② 2021年度大学において計上した2号館・学生会館・第2学友会センター等の空調機更新、総持寺キャンパスバスロータリー整備、文学部建築専攻製図室整備等による施設設備引当特定資産取崩収入8億9,977万円がなくなること
  • ③ 両高等学校における就学支援金の対象者減に伴う支援金受取額の減少や、私学事業団積立払戻金の減少などにより預り金受入収入が2億2,340万円減少すること
  • ④ 2021年度計上した大手前中高における6F校舎改修や空調更新、小学校における北館空調・北館本館照明LED更新がなくなることと、当年度小学校における本館110記念ホール天井改修工事の発生との差し引きなどにより施設建設引当特定資産取崩収入が2億2,049万円減少すること
などである。
資金収入調整勘定は△17億8,219万円となり、2021年度の△18億143万円より1,924万円のマイナス幅の縮小(当年度収入としては増)となる。主な要因は、期末未収入金が4,689万円マイナス幅が縮小(当年度収入としては増)したことと、前期末前払金が2,765万円マイナス幅が拡大(当年度収入としては減)したことの差し引きによる。
 一方で、資金支出の部(翌年度繰越支払資金を除く)については、当年度支出合計が219億9,377万円となり、対前年で10億9,402万円の増(対前年5.2%増)となる見込みである。事業活動収支で説明した科目以外で予算計上額が大きな科目は、施設関係支出、資産運用支出、その他の支出である。対前年で増となる主な要因は、施設関係支出の増である。
施設関係支出は21億7,717万円となり、2021年度より11億406万円増(対前年102.9%増)となる。主な要因は、当年度大学において総持寺キャンパスⅡ期計画に係る建設仮勘定支出を計上する一方で、2021年度大手前中高において計上した6F校舎改修や空調更新、小学校において計上した北館EHP空調更新がなくなることによる差し引きなどである。
資産運用支出は28億8,705万円となり、2021年度より3億960万円の増(対前年12.0%増)となる。主な要因は、施設設備引当特定資産繰入支出が14億9,937万円増加、施設建設引当特定資産繰入支出が2億7,987万円増加、退職給与引当特定資産繰入支出が4,058万円増加した一方、第2号基本金引当特定資産繰入支出が15億円減少したことの差し引きなどによる。
その他の支出は39億1,631万円となり、対前年3億5,117万円の減(対前年8.2%減)となる。主な要因は、両高等学校における就学支援金の対象者減に伴う支援金受取額の減少や、私学事業団積立払戻金の減少、私学事業団積立貯金の減少などに伴い、預り金受入収入とともに預り金支払支出が減少したこと、業者への未払金減少などに伴い前期末未払金支払支出が減少したことなどによる。
 この結果、当年度の収入合計から支出合計を差引いた支払資金の増減額は△7億3,011万円となり、これに前年度繰越支払資金を加算した翌年度繰越支払資金は54億1,736万円となる見込みである

以上