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2020.05.14

「コロナ後」を見据えて

 「なにがどうなろうと、たいしたことありゃあせん」
 これは、皆さんの大先輩で本学の第一期生である、作家宮本輝さんの自伝的小説「流転の海」シリーズの最終巻「野の春」における、宮本輝さんらしき人物である伸仁の父の熊吾の言葉です。
 宮本輝さんによると、「流転の海」全9巻の中でも、読者が最も好きな言葉だそうです。
 この小説の主人公松坂熊吾の人生は波瀾万丈で、何度も不幸のどん底に陥っています。それでも彼が人生の最末期に述べた言葉が、この言葉だったのです。

 緊急事態宣言は延長されましたが、世の中の空気は、次第に解除後を意識したものへと変化しつつあります。人々の警戒感が過度に緩むことのないよう、今こそ正しい「コロナ後」の社会のあり方を考えなければなりません。
 さて、我々は「コロナ後」に、全く元通りの世界を取り戻すべきなのでしょうか。
 1ヶ月の緊急事態宣言の期間、外出自粛等により、止まった活動も多くありましたが、その間にも世界の時間も皆さんの人生の時間も進みました。我慢していたことを再び行う楽しみも多々ありますが、もはや戻らなくてもよいものもあるのではないでしょうか。
 例えば家で家族と過ごす休日。友だちとのWeb上での交流。オンラインを活用した授業や教職員のテレワークという働き方の中のいい部分など。
 自宅に長く居ることで新しく発見したことや、経済活動が一時的に止まったことで見えてきた自然や社会や生活についての気づきを、次の時代に応用すべきではないでしょうか。

 確かにこの間の「自粛」生活は、我々に苦しみも与えました。しかし、このことを次の時代に負の遺産として引きずるだけではなく、せっかく起こった変革をも取り込んだ、新しい暮らし方、新しい学び方、新しい世界との繋がり方に転換することができたなら、我々の「自粛」も、有意義な経験へと変わるはずです。戻らなくても、「新型コロナ」経験も含めて進めばいいのではないでしょうか。

 「なにがどうなろうと、たいしたことありゃあせん」
 皆さん、先を見据えましょう。今後を考えましょう。未来を信じましょう。そうして、前向きに今の状況を捉え直してみてください。光が見えてきませんか。

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