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2020.07.28

感染リスクと「私の個人主義」

 COVID-19の感染拡大が続いています。大阪府の新規感染者数は連日100人を超え、本学の学生にも感染者が出ました。当然ながらこれまでにも増しての注意が必要です。
 一方、本学でも、7月27日から、一定の条件の下で課外活動が再開されました。待ち望んでいた学生も多いと思います。課外活動もまた学びの場の一つであることは確かなので、大学は再開を決断しました。ただ、課外活動で集団感染が発生した他大学の情報も入ってきます。
 学びの機会の多面的な継続と、感染防止策の徹底による安全の確保とは、時に相矛盾することがあります。これらの両立の可能性を探ることは、今、大学に投げかけられている大いなる難問です。

 学生の皆さんにとって、感染は避けるべきものでしょうが、長期にわたる過度の活動停止もまた別の苦痛をもたらすものだと思います。かといって、家を出て何らかの活動を行うことには、常に感染のリスクが伴います。

 一つだけ確かなことは、もし自分が感染したとしても、このこと自体は罪悪でないことです。いくら軽くても、症状が出たならば罹患ですので、むしろ同情してもらってしかるべきです。ところが最近では、感染者に対し理不尽な差別的視線が向けられることも少なくないようです。皆さんは、仮に感染したとしても、治療や回復を最優先にして、過度の自責の念を持つ必要はありません。
 ただし、発熱や咳などの自覚症状があるにも拘わらず、会合などに出席するとなると、話は全く別です。自分の危険性の問題だけに止まらないからです。自分の都合を優先して他人を危険にさらすことは、何としても避けなければなりません。

 ここでの趣旨とはやや異なりますが、夏目漱石が1914年に学習院で行った講演に「私の個人主義」と題されたものがあります。ここで漱石は、個人主義や自己本位を推奨しながら、自我や自覚と唱えれば勝手なことをしてもよいのではなく、自己を尊重すればするほど、他人の個性をも同等に尊重しなければならない、とする考えを示しています。ここが、「私の」個人主義とわざわざ断っている所以です。

 学びのための活動と安全確保の二律背反の難問を解くためには、やはり皆さんの「私の個人主義」が必要なのです。

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