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2021.01.13

当事者性と非当事者性

 あけましておめでとうございます。また、新成人の皆さん、ご成人おめでとうございます。
 変異株の思いもかけぬ感染拡大で、帰省もままならなかった人もいるかもしれませんが、それでも徐々に、この疫病との付き合い方が見えてきたようです。

 新年早々、社会学部の富田大介先生の企画された、田中功起氏の映画「可傷的な歴史(ロードムービー)」の上映会と、それに続く富田先生、田中氏、劇作家で演出家のあごうさとし氏、本学社会学部の松谷実のり先生の4人によるトークセッションに参加してきました。
 映画はほぼ、在日コリアン3世の女性と日系スイス人の男性の対話のみで進みます。中心的な話題は、在日コリアンのアイデンティティの危機についてです。

 色々と考えさせられました。映画は、ドキュメンタリー仕立てながらフィクションでもあり、作品の枠組を超えて田中氏自身が登場したり、製作過程を振り返るエピローグが用意されていたりしていて、通常の映画を見るような、内容をただ受け取るだけでは済まない仕組みになっています。どうやらこの映画の造り自体が、特定の出来事や世の中の問題についての我々の関わり方を象徴しているようです。

 この映画に扱われたヘイトスピーチなど、ある社会的な問題に対して、当事者性をもって関わるとはどのようなことをいうのか。また、非当事者性によってこそ見えるものもあるのではないか。非当事者には語る権利はないのか。映画は我々に考える種をたくさん播いてくれました。

 この催しの前日、学友会追風の総会があり、新年度に向けて新しい執行部メンバーが任命されました。旧執行部に残された仕事は、総持寺キャンパスのアカデミックアークの5階スカイガーデンの模様替えです。アンケートをもとに、広場に入りやすいようバリアフリーの通路を用意し、みんなが憩えるベンチや映えるモニュメントを置くことが計画されています。
 彼らが目指したのは、「みんなが心地よい居場所を作ること」です。ここに謂う「みんな」には、「当事者」も「非当事者」も含まれるはずです。

 当事者であれ非当事者であれ、大切なのはその問題にしっかりと向き合うことです。
 今年も、行動制限等に臆することなく、考え続け、学び続けてください。

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