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2021.04.28

春の大型連休再考

  今年も「ゴールデンウィーク」期間を覆うように緊急事態宣言が出され、「人流」を抑えるという目的のために人の動きが止められました。「人流」は手元の辞書などには見当たらない言葉です。「人出」という言葉が相当すると思われますが、「人流」という言葉には、繁華街で多くの人が行き交う姿を殊更に思い浮かべさせる力があるようで、すぐに広まりました。しかし、同じ流れるにしても、人には水とは違い一人一人に個性と考えと事情があるはずです。また必ずしも同じ方向に流れているわけでもありません。人を流れに見立てることは、少し乱暴なようにも思えます。

 ところで、「ゴールデンウィーク」も和製英語であり、元々映画の宣伝用語だったとされます。
この時期は確かに人出が多く、以前は飛石連休と呼ばれたりもしましたが、「国民の祝日に関する法律」が改正されて以降、休むことによって再確認されるべき休日の意味が、期間の長さで強調されすぎたために、却って見えにくくなるという皮肉なことになっています。

 4月29日は、激動の時代昭和を顧みることが趣旨の「昭和の日」です。5月3日は日本国憲法の施行を記念した「憲法記念日」で、憲法をめぐるさまざまな集会が行われることが通例となっていました。また5月5日は端午の節句で「こどもの日」です。こどもの人格を尊重しその幸福を願う日とされています。その間の5月4日は、当初いわゆる「国民の休日」でしたが、今では自然に親しみその恩恵に感謝する趣旨の「みどりの日」です。

 このとおり、それぞれの休日は、その趣旨からすべて人の行動および人出を促す日です。しかしながら、本来の休日の意義を忘れた昨今の人出については、再考すべきとも考えられます。
 この時期の観光なり商業なりを支えていた多くの人は、これまで当然ながら休むことができず、この大型連休の休日の意味合いを考えることもできなかったはずです。

 大型連休の過ごし方は、緊急事態宣言とは別に、もう少し考え直してもよいのかもしれません。
 新型コロナウィルスの蔓延をきっかけに、これまでの当たり前に疑問を投げかけ、問い直すことができれば、我々はもう少しポジティブにこの緊急事態を克服できるのではないでしょうか。

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