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2020.10.01

追風が吹く

 本学の学友会「追風」の新委員長の加地龍也君を初め、副委員長の田中春那さん、小牧大輔君、椎橋琉君の4人が学長室に挨拶に来てくれました。本来ならば4月に「対面」するはずでしたが、ようやく叶いました。
 加地君曰く、秋学期から再開した対面授業では、隣で一緒に授業を受けている学生の存在を、以前よりはっきりと感じるとのことでした。前を向いているので直接その顔や姿が見えなくとも、隣の学生がうなずいたり笑ったりするのは確かに伝わります。同じ場所に居ることの大切さは、彼らの学友会活動の原点でもあります。既に新しい対面方式でのクラブ・サークル勧誘など、模索も始まっています。
 その一方で、オンライン開催でどこまで楽しい企画ができるかという挑戦も始まりました。今年の学園祭はその代表です。初めての試みで、そろそろプレッシャーもかかり始めたとのことです。それでも実行委員長の椎橋君は、全世界に配信できるので、参加者は過去最高になるかも、と豪語していました。私が目標値20億人くらいかな、と言うと、マスク越しにニヤリと笑ったように見えました。

 私の学生時代、窓から眺めると、やや遠くに海が見える教室がありました。今でも時折、4時間目あたりの夕陽とともにその風景が思い浮かびます。
 これも小川洋子の『物語の役割』に教えてもらった話ですが、レイモンド・カーヴァーという作家は、「書くことについて」(『ファイアズ(炎)』所収、村上春樹訳)という文章に、「作家になるには、とびっきり頭の切れる必要もないのだ」「作家というものはときにはぼうっと立ちすくんで何かに――それは夕日かもしれないし、あるいは古靴かもしれない――見とれることができるようでなくてはならない。頭を空っぽにして、純粋な驚きに打たれて」と書いています。これを読んで、記憶の中の教室から見える海から潮風が吹いたような気がしました。

 皆さんには、キャンパスに「頭を空っぽにして、純粋な驚きに打たれ」るような、特別の場所はありますか。もちろん、「ぼうっと立ちすくむ」のは、「ときには」程度にしてほしいのですが。
 一人を楽しみ、友人と共に居る時間も楽しむ。本学のキャンパスがそのようであればいいなと思います。

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