大学紹介
2021.03.07
これだけ科学技術も進展し、人間の叡智も深まったはずの今日になって、ウクライナで、たいへんなことが起きています。まず「戦争反対」ということだけは、みんなで共有したいと思います。
皆さんは、今起こっていることから、決して目を逸らさないでください。そこに、我々が学ぶべきものをしっかり見出してください。こんなことは、決して二度あってしかるべき出来事ではありません。
これまでそれほどよく知られているとは言い難かったウクライナですが、ウクライナ民話を基にした『てぶくろ』という絵本は、日本でも人気が高いロングセラー作品です。私の家にも、子供たちへの読み聞かせ用にありました。福音館書店発行の「世界傑作絵本シリーズ・ロシアの絵本」で、エウゲーニー・M・ラチョフの絵、うちだりさこの訳によるものです。初版は1965年で、私の家のものは1996年版でした。皆さんも、幼い頃、読んだことがあるかもしれません。
内容は、おじいさんが森で手袋を片方落としていったところ、まず鼠がこれを見つけ、蛙、兎、狐、狼、猪が順にやってきて、最後には熊まで、一つの手袋の中に入って過ごすというものです。
絵本に教訓的な意味を求めるのはよくないのでしょうが、このような出来事が起こった今日から読み返せば、様々に象徴的な読み方を誘われます。
ところでこの絵本は、なぜ子供たちにこれほども人気があるのでしょうか。
大人は、これだけの動物が一つの手袋に入るのだろうか、とか、狼や熊と鼠や兎が一つの手袋に入って争いはないのか、などとつい考えがちですが、子供たちはそのようなことには全く無頓着で、次から次へと動物がやってきて、手袋がぎゅうぎゅう詰めになる絵を楽しんでいます。
要するに、大人の持つ合理的で科学的な世界観では説明しがたい面白さが、この絵本にはあるわけです。
世の中も、常識的なことばかりが起こるわけではありません。人間は、もっと理不尽で不可解な世界に生きています。科学や合理性だけでは、世の中の仕組みを真に分かったことにならないのです。
今回の出来事に際会して、人間がまだまだ学びが足りない存在であることが明らかになりました。皆さんが、この不幸な出来事から、より多く学び、より広くより深い思慮に至ることをひたすら祈ります。
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