大学紹介
2023.05.23
来る5月29日は、追手門学院の創立記念日です。皆さんには、歴史や文化について、ただそれを振り返るだけではなく、次代につなぐことを意識してほしいと願っています。
つい先日、国立国際美術館の「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」を見てきました。ピカソを中心に、パウル・クレーやマティスなどの絵と、ジャコメッティの彫刻などが数多く展示されていました。ピカソの絵は、個性の異なる絵が集められていて、壮観でした。
珍しいことに、展示されている絵は、例外を除いてすべて「写真撮影可」でした。
若者たちにも美術に興味や関心をもってもらおうという主催者側の意図の表れがあったのかもしれません。一方で、これを実現するには、絵の権利問題や図録の売れ行きなど、複雑で現実的な問題もあります。
むしろこの「写真撮影可」は、より本質的で大切な点を思い起こさせてくれました。それは、芸術文化の継承についてです。
1989年に新婚旅行でパリのルーブル美術館を訪れた際、モナリザが「写真撮影可」であることに激しい衝撃を受けました。モナリザは当時も最も人気が高く、また貴重な収蔵物で、絵は一応ガラスで保護されていました。つまり私には「遠い」存在だったのです。
さらに館内では、若い人たちが、床に座り込んでスケッチに励んでいました。これにも驚きました。日本なら、床に座ることも、それほど長く滞在することも許されないだろうと思ったのです。
ここでようやく、美術品に対する考え方の差、あるいは文化の差に思い至りました。絵は、ただ鑑賞するだけのものではなく、スケッチし、間近で観察し、次の芸術を生み出すために貢献するものなのです。
同じ時に訪れたウィーンでは、国立オペラ座でバレエ公演を観ましたが、立ち見席が、若い人のために格安で用意されていました。しかもその席は、客席の中央真正面の、とても見やすい場所に設置されてあるのです。
文化を学ぶ上で大切なことは、それを高級な骨董品として見ることではなく、自分に引きつけ、次の時代へのバトンリレーの立場で見ることです。
皆さんも、何でも結構ですから、文化に関わる何かを、次の世代につなぐ体験をしてみませんか。その蓄積が、我々の新しい歴史を作っていくはずです。
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