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2021.05.07

電子図書によるDX

 5月5日付の『日本経済新聞』朝刊に、本学図書・情報メディア部長湯浅俊彦先生の電子図書館をめぐる取り組みについての記事が大々的に掲載されました。
 本学では、電子図書館サービスLibrariEをいち早く導入し、図書情報をどこにいても活用できる環境整備に注力してきました。このサービスは、既存書籍を電子図書として読むだけでなく、論文などの成果物を、学生自ら電子書籍化し電子図書館にアップロードすることが可能です。湯浅先生はこれを「知の還流構造」と呼んでいます。

 ただ、電子図書は、特に紙の本を愛する人々から、未だに敬遠されがちです。
 私は日本文学研究者で、初版本なども大好きですが、電子図書については当初から導入推進派でした。この問題が紙か電子かという二項対立の問題ではないと考えるからです。

 想像してみてください。「源氏物語」などはまず手書きの写本が何冊か作られ、廻し読みされて次第に拡がったと考えられます。ただしこれではもどかしいので、次に印刷物として版本が発明されます。しかし木版印刷はすぐに木が摩耗します。そこで鉛の活字による活版印刷が登場します。これで大量印刷が可能になりました。活版印刷が木版印刷にとって代わった明治10年代あたりからが、我々がイメージする本の時代です。
 やがてこの活字本の時代も、約百年後の昭和末頃に終わりました。今はコンピュータの電子写植によって本が作られる時代です。
 その後登場してきたのが最新の媒体である電子図書というわけです。

 電子図書より紙の本の方が良いというのは、私などにも感覚的には理解できます。その手触りや紙の匂いなどはとても魅力的です。ただ、だから本は紙でなければならないという議論は乱暴です。
 これは、「源氏物語」を読むには活字より写本の方が良い、というのと似ています。現代人にはなかなか困難でしょう。
 要するに我々は、紙も電子も楽しめばよいし、どちらも利用すればよい。

 実はこのように、媒体の変化が情報を得る方法や思考方法まで変えることが、DXの基本にある考え方なのです。
 電子図書をきっかけに、紙の本、活字の本、版本、写本などのメディアの多様性を是非楽しんでください。これこそ新しい時代に生きる我々の特権なのです。

▼追手門学院大学の電子図書館サービスLibrariE
https://www.d-library.jp/otemon/g0101/top/

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