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2022.05.20

芸術作品をきっかけとして

 絵画や小説、演劇などの芸術作品は、この世になぜ存在しているのでしょうか。
 皆さんは、小説を読んだり、演劇を見に出かけたりする時間を、「無駄」だと考えたことはありませんか。芸術には、何か「意味」があるのでしょうか。
 大学受験で文学部に進むことを決めた時、父親から、なぜ経済学部とかではないのか、と尋ねられたことがあります。農家である父親は小卒で、大学のことはあまり知らないようで、特に文学を学ぶことの意味がよくわからなかったようです。その意味について、自分でもしっかりとした答えが欲しいと思い、ずっと考えてきました。

 社会学部の舞台表現プロジェクト「STEP」の脚本を書いた社会学部3年の川島武士君と出演者の経済学部3年の石橋凜さん、心理学部3年の牧原葉月さんが、横田修先生とともに、学長室に案内に来てくれました。できるかぎり自前で公演をしたいと、クラウドファンディングも始めています。
 「STEP」は、これまでも社会問題について演劇を通じて世に問いかけてきましたが、今回も、口唇口蓋裂をもって生まれた在日コリアンのシンガーソングライター、YOUさんの半生を描いたラジオドラマ『鼻曲がりと言われた少年』を舞台化しました。クラウドファンディング担当の牧原さんによると、YOUさんはこの活動のために、LIVEのチケットなどを快く提供してくださったとのことです。

 世の中にはいろんな問題が伏在しています。しかしながら我々は、多くの場合なかなかそれに気づくことができません。あらゆる芸術は、これらに気づき、普段は思い至らないことへ目を向けるきっかけとしても機能します。芸術の存在する意味の一つは、このきっかけづくりにあると思われます。

 小川未明という作家は、「囚われたる現文壇」の中で、「本当の芸術は現在の生活から飛躍した生活を暗示するものでなくてはならない。卑近な眼界からヨリ遠い人間生活の視野を望ましめるものでなくてはならぬ。」と述べています。普段は通り過ぎるようなこの世の実像を知り、問題に気づき、それについて深く考えること。考えてみれば、そのきっかけが現実の体験からではなく、演劇や文学などの芸術によってもたらされることは、幸せな出会いなのかもしれません。
 ぜひ「STEP」の公演などの芸術をきっかけに、視野を拡げてみてください。

STEP第9回公演「鼻曲がりと言われた少年」

 

●公演情報はコチラ⇒https://www.otemon.ac.jp/whatsnew/pressrelease/06_20220518.html


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