大学紹介
2021.09.13
東京パラリンピックも閉幕し、9月も半ばになりました。新しい学年暦のために、まだまだ長い夏休みが続いていますが、この「長さ」を有効に生かして過ごせていますか。
大学院博士課程の頃、専門外の漢詩の授業に出ていたことがあります。一海知義先生の授業でした。例えば、つくりが同じ漢字は同じような意味で興味深い、という話題がありました。長い魚が「鰻」、長く伸びる草が「蔓」、長くゆったりとした水流の様子が「漫」、これらと同様、「慢」は心が長く伸び緩んだ状態を示します。そこから、おこたる(怠慢)という意味にもなりましたが、おごり高ぶる(高慢)という意味にもなりました。自分を長く大きく見せるという意味があるのかもしれません。
このような話を、一海先生はさも楽しそうに漫然と話されるのです。例えば一海先生によると、六甲と三宮は、漢詩の対句として見ると実に見事だとのこと。六と三の数字が対であるのはもちろん、甲と宮が、意味や世界が微妙にずれながらも対になっていて、絶妙でたまらないのだそうです。分かりますか。
眼の前にある世界の中に、このような思いがけない対、すなわち真理を発見して楽しむこと、これが漢詩ひいては学問の一つの楽しみのようです。
さまざまな行動制限がかかり、自由に活動できない日々が続いていますが、皆さんには、一海先生ほどでなくとも、思考と観察の眼だけは、怠ることなく常に活性化させておいてほしく思います。
先日、『毎日新聞』に、渥美由喜さんが「11歳の次男に学ぶ」というコラムを寄せておられました。次男は1歳半で脳腫瘍がわかり、切除した脳の部位が言語・運動機能をつかさどるところで、言葉と運動能力がうまく発達しなかったが、それを補うためにか、逆側の理数の能力が抜群に発達し、算数オリンピックで毎年上位入賞するに到ります。この能力に気づくまでは、運動のため武道の稽古に通ったりしますが、いっこうに上達しません。方向が違ったわけです。
コラムは「「逃と挑」の字の違いはごくわずかだが、人生では大きな差になる。11歳の背中がそう教えてくれた。」と締め括られています。一海先生の漢字の説とは合わないことになりますが、実に示唆的な文章だとは思いませんか。
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