ホーム>大学紹介>学長メッセージ 言伝>学長メッセージNo.76  なぜ大学ではレポートや卒論を書くのか

大学紹介

About Otemon
  • シェアする
  • facebook

2022.11.09

なぜ大学ではレポートや卒論を書くのか

 大学において、なぜレポートや卒業論文を書くことが求められるのでしょうか。
 本や論文から得る情報とインターネット上から得る情報との差異から、これを考えてみたいと思います。

 大学において、我々は、さまざまな段階の研究の方法を学びます。その際、多くの場合、調査、検証や論証、考察、発表などの作業を伴います。
 本を例にして云えば、調査や論証の過程で、本の周辺情報が、本の内容について、信頼性などを補強するメタ情報を与えてくれることに気づきます。例えば、それを書いた人が著名な研究者であったり、よく知られた出版社から出された本であったりすれば、その本の内容が信頼できるものと予想することができます。さらにいえば、本が分厚い、参考文献がたくさん付いている、というようなことも、本文の内容を外側から補強します。
 このような本文の周辺情報のことを、ジェラール・ジュネットという学者は、『スイユ』という著書などで、パラテクストと呼んでいます。パラテクストとは、本文すなわちテクストの周辺に位置して、そのテクストについてのメタ情報を与えるものです。具体的には、本のタイトルや著者、表紙や参考文献などということになります。
 一方、インターネット上の情報は、このパラテクストが、本や論文などと比べるとやや曖昧です。特に、誰が発信した情報なのか、参考文献はどこかにあるのか、などがそうです。
 もちろん、インターネット上にも、しっかりしたパラテクストに囲まれた、信頼できる情報も多くあります。これを提供過程があやふやな情報からしっかり区別できてはじめて、インターネットを、研究の場面においても実に便利な道具として用いることができるのです。

 ここで大切なのは、本や論文の価値を決定しているのは、テクストだけではなく、むしろパラテクストの影響が大きいという事実です。

 レポートや論文を書く際に、我々はこの事実に否応なく向き合うことになります。むしろ大学で学んで欲しいのは、このパラテクストの大切さです。そこには、論文などに留まらない、我々の思考やものの見方全般に通じる鍵や「こつ」のようなものがあります。それを手に入れるために、レポートや卒業論文による学びが効果的なのです。

バックナンバー