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2024.10.10

秋と「制度的思考」

 秋学期が始まりました。あんなに暑かった夏が、まるで嘘のように、朝夕とても涼しく、過ごしやすくなりました。秋の語源は、収穫物などが十分あるので、充足しているという意味の「飽く」から来ているという説や、漢字のイメージがそうであるように、木々が紅葉したり果実が赤く熟したりすることから、「赤」から来ているという説があります。この語源説による秋のイメージは、皆さんの印象と合致していますか?
 日本の多くの大学は、春学期と秋学期の2学期制が基本で、学業の1年のサイクルについては、春4月から始まり3月に終わるという「制度」が定着しています。しかし、欧米などでは学期の始まりが9月であることの方が一般的で、日本もかつてはそうでした。今でも、グローバル化推進のために、9月入学や、1年を4学期に分けるクオーター制について、既に導入したり、その検討を行ったりしている大学もたくさんあります。
 要するに、4月始まりや2学期セメスター制などは、あくまで現時点の「制度」に過ぎず、いずれ変更されるかもしれないものです。我々はただそれに慣れているだけで、皆が9月に入学すれば、すぐに9月は学年の境目として認識されるようになるのかもしれません。
 ここで、「制度」の変更に伴う季節感について考えてみましょう。9月入学になると、桜の花が卒業式や入学式を表象するような考えは失われ、やがて紅葉などに置き換わるのでしょうか。
 また、春夏秋冬という日本の四季の順は、春が再生や旅立ちの季節であるというイメージを定着させました。これが秋冬春夏という順になった時、1年のサイクルはどのように心の中に印象づけられるのでしょうか。
 これらは、学年暦という決まり事の「制度」の変更に伴い、季節感という我々の慣習的な感覚およびそれに付随する慣習的で「制度」的な思考も変化するのかという問いかけです。
 そもそもこのような問い自体が、現行の日本の四季の意味を最優先させた、「制度的思考」の最たるものかもしれません。しかしながら、この「制度」の次元と、それによって形成された慣習的な感覚や思考の次元が必ず連動するというのも、どうも信じがたいような気がします。
 皆さんは、秋をどのような季節と感じ、考えていますか?

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