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2020.10.30

学園祭に寄せて ― 異化と自動化のはざまで

 今年もOLS(追手門学院大学リーダーズスクール)の授業に講師として招かれました。相も変わらず、異化と自動化の話をしました。
 自動化とは、日常の中で、知らず知らずのうちに、あらゆる事象に疑問を持たないようになってしまっている状態を云います。例えば、空の色を聞くと反射的に青色と答えるような事態です。このような先験的な状態から意識的に脱しようとする表現や行動が異化です。
 若い頃参加した学会でのことですが、入り口に水色とピンク色の二色の全く同じ筒状の資料が無作為に混ぜて置いてありました。ほとんどの男性が水色、女性がピンク色を選んでいました。その日の学会発表はジェンダーの問題についてであり、多くの参加者はこの問題に対しての自らの無頓着ぶりに先ず恥ずかしい思いをすることとなりました。幼児用品のお店でも、以前は男の子用に水色、女の子用にピンク色の服ばかり置いてありました。今はそれほどでもないのでしょうが、男の色、女の色が、多くの人の頭に刷り込まれていたわけです。皆さんは、この自動化に気づけていますか。
 自動化は、制度化という概念とも近いものです。とある授業で、「谷崎潤一郎の作品は今回初めて読みましたが、印象が変わりました」という感想を書いてくれた学生がいました。初めて読んだのに、印象が変わった、はどう考えてもおかしい。読む前から谷崎潤一郎の作品の印象が決まっているのです。これを制度化と呼んでいます。我々は、何かを知らないのではなく、あやふやな情報をなぜか知りすぎているのです。
 11月1日に、学園祭が初めてオンライン開催されます。テーマは「「未来永劫」~人を集めず、人をつなげる~」というもので、大学に多くの人が集まることができないことを逆手に取ったものです。実行委員会のメンバーは、この開催方式のために予定していたゲストに断られるなど、予想外の経験を例年以上に積んでいます。
 計画通り順調に物事が進んでいる時には、学びは少なく、何か急なアクシデントが起こった時の方が、深い学びが得られることが多いのかもしれません。
 これも異化なるものの効用の一つです。ただし実行委員会にとっては大変な困難でしょうが。成功を心より祈っています。

▼オンライン学園祭はコチラから 11月1日(日)オープン
https://www.otemon-gakusai2020.jp/

▼イベント詳細 第54回学園祭「未来永劫」~人を集めず、人をつなげる~
https://www.otemon.ac.jp/event/campus/_14216.html

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