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2024.11.08

「見る」ことの勧め

 11月に入り、文化の日である3日と翌4日には、学祭が両キャンパスで賑やかに行われました。実行委員長の北口陸刀君が、大学執行部の会議である大学教育研究評議会に来て、当日の報告をしてくれました。緊張したようですが、評議会メンバーからは温かい拍手が送られました。
 5日には、総持寺キャンパスII期棟アカデミックベースの竣工式が行われました。南北250メートル、6階建ての壮大な建物がついに完成しました。皆さんの心地よい居場所となるよう、これから什器等を設置し、来年4月のオープンに備えます。

 今年は富士山の初冠雪がちょうど立冬の11月7日と、観測史上最も遅かったことがニュースとして取り上げられていました。ところで、初冠雪というのは、富士山に初めて雪が降ることを指すのではなく、甲府にある気象台から、初めて雪が見えたことを謂うそうです。あくまで冠雪が見えることが肝要で、正しくこれが、富士山が自然遺産ではなく世界文化遺産である所以です。思えば桜の開花宣言の際も、毎年目視で数えていますね。
 文化というのは、人間が見ることが前提になって存在感や存在意義を持ちます。富士山でさえ、初めて見た人は、それが富士山だとはわからないはずです。見る前から、我々はどこかで富士山の像を頭に刷り込まれているから、それが富士山だと認識できます。富士山以外の山は、たいてい、見分けにくいと思いませんか。これは、あまり刷り込みがされていないからです。そしてこの刷り込みこそが、文化なのです。

 奈良国立博物館では、毎年、文化の日の前後、正倉院展が行われます。今年も観てきました。1200年以上も前の宝物が、実に色鮮やかなまま保管され続けていることも奇跡的ですが、永年にわたり、人々がこれを楽しみに観続けていることもまた重要です。
 森鷗外は、最晩年、帝室博物館総長兼図書頭という役職に就いて、大正期のほぼ毎年秋に、帝室奈良博物館を訪れ、正倉院の曝涼(虫干し)にも関わっていました。

 皆さんもぜひ、何かをじっくり見に出かけてみてください。その「見る」ことが、文化を育て、文化を次代へ継承します。そうそう、奈良国立博物館から東大寺に向かう途中に、当時の官舎の門のあとが、「鷗外の門」として残っています。穴場ですよ。

学園祭の様子(茨木安威キャンパス)

学園祭の様子(茨木総持寺キャンパス)

11月5日に行われた竣工式

挨拶する真銅学長

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