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2021.06.03

イギリスという国はあるのか

 本学学生の5月の累計陽性者数が4月よりも少なかったという報告を受けました。学内でのクラスターもなく、重篤な症例もないと聞いています。皆さんの日頃の健康管理の努力と、感染拡大防止のための行動に、改めて感謝いたします。
 マスコミなどでは、若者が動き回るために感染が拡大しているかのような議論も聞かれますが、若者、特に大学生に対して、やや一方的で偏見に満ちた論調に聞こえます。若者の多くは節度を守った生活を送っています。

 今から10数年前、パリ郊外のラ・ヴィレットという子供たちにも人気の場所を訪れて、少し衝撃を受けたことがありました。展示施設に、日本の食卓風景として、にぎり寿司が何貫か載った皿と、白ご飯と味噌汁の二つの茶碗が並べられていたのです。日本のことが今でもこの程度しか知られていないのかと思い、実に寂しく思いました。
 ちなみに、アメリカ合衆国の食卓風景の展示は、皿の上にハンバーガーが一つ載せられているだけでした。

 では、我々は、世界のことをよく知っていると言えるでしょうか。
 日本では、正式名称を「グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国」という国を、イギリスと呼んでいます。英語圏ではUnited KingdomやUKと呼ばれるのが普通だそうです。イギリスは特殊な語であり、江戸時代にエゲレスなどと呼ばれていた名残で、海外ではまず通用しないはずです。
 オランダはオランダ語ではNederland(ネーデルラント)、英語表記はthe Netherlands(ザ・ネザーランズ)です。ドイツはドイツ語での通称がDeutschland(ドイチュラント)、英語での通称はGermany(ジャーマニ)です。
 そういえば、中国と韓国だけは漢字表記で、国がついていますね。
 地理や歴史で習う国名だけでも、これだけ不思議な点があります。日本における世界の知識はこれでよいのでしょうか。ラ・ヴィレットの展示を笑えますか。

 真のグローバル化のためにも、他の国自体のことを深く理解することはもちろんですが、日本における他の国への視線もよく知る必要があります。そこに偏見や先入観はないのか、と。

 偏見や先入観は、最も陥りやすい思考の罠です。
 感染をめぐる世代論をきっかけに、皆さんも、自己の思考の類型化について考えてみてください。きっと視野が広がるはずです。

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